非上場株の評価損計上でミス発生
資産状態悪化判定で簿価と比較する誤りや、株買増し時の修正計算忘れも
・ 非上場株の評価損計上には、@価額の低下、A資産状態の悪化の二要件を満たす必要。
・ 資産状態悪化判定は、株取得時と期末の一株当たり純資産価額を比較も、前者を簿価とするミス多し。
・ 「株取得時の一株当たりの純資産価額」について、株の買増し都度の修正計算を失念のケースも。 |
3月決算法人の決算期末が近付いているが、引き続き景気が低迷するなか、今決算において税務上の株式評価損計上を検討している法人も多いことだろう。
税務上の株式評価損計上にあたっては、当該株式が上場株式であるか非上場株式であるかに応じて要件が設けられているが、このうち非上場株式の評価損計上要件の判定ミスが少なくなく、課税当局は注意を呼び掛けている。
税務上、非上場株式について評価損を損金算入するためには、@価額の低下(法令68@二イ)、A資産状態の悪化(同ロ)という二つの要件を満たす必要があるが、特に注意を要するのがAの資産状態の悪化の判定である。
資産状態が悪化しているかどうかは、「株式の“取得時”の一株当たりの純資産価額」と「“期末”の一株当たりの純資産価額」を比較することになるが(法基通9−1−9(2))、前者の「株式の取得時の一株当たりの純資産価額」に代えて「簿価」を比較対象に選定しているケースがみられるようだ。
しかし、他者から株式を購入した場合等においては、必ずしも「簿価=株式の取得時の一株当たりの純資産価額」にはならない。したがって、簿価との比較では「50%以上の下落」となっていても、通達どおり「株式の取得時の一株当たりの純資産価額」と比較すると50%未満の下落にとどまっているということが起こり得る。
また、「株式の取得時の一株当たりの純資産価額」は、株式の買増しの都度の修正計算が求められるが(法基通9−1−9(注))、この修正計算を失念しているケースもあるようだ。たとえば債務超過状態の子会社への追加出資では、投資額の増加に伴い簿価は増加するが、取得時の一株当たりの純資産価額は修正計算によってむしろ減少することがある。簿価からの下落率が50%以上であっても、修正計算後の「取得時の一株当たりの純資産価額」からの下落率は50%未満にとどまる可能性がある。
なお、上場株式の評価損については、2009年4月に国税庁より公表の「上場有価証券の評価損に関するQ&A」を参照されたい(本誌300号7頁)。
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(週刊「T&A master」442号(2012.3.12「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2012.5.23 ビジネスメールUP!
1685号より
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