ニイウスコー粉飾決算で元会長に実刑
「コンプライアンスを無視」と横浜地裁、元副会長には執行猶予を付す
・ 横浜地裁はニイウスコーの粉飾決算事件で証券取引法違反の罪(虚偽有価証券報告書の提出等)に問われた元会長らに有罪判決。
・ 元会長には9月20日、懲役3年、罰金800万円の実刑判決を言渡し。
・ 元副会長には9月15日、懲役2年6月、執行猶予4年、罰金300万円。 |
本件は、東京証券取引所に上場していたニイウスコーの元代表取締役会長・副会長の2名が共謀のうえ、2期にわたり循環取引等を利用した架空売上げの計上などの方法により売上高や経常利益を水増しして記載した損益計算書等を掲載した重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券報告書・有価証券届出書を提出したとされ、旧証取法違反の罪に問われていた事件。求刑は元会長に懲役5年、罰金1,000万円、元副会長に懲役3年、罰金500万円であった。
同社は平成14年、東証二部に上場。15年に一部指定されたが、19年6月期決算では特別損失293億円を計上、二部に指定替えとなり、20年5月2日には民事再生手続が開始され、6月1日、上場廃止となった。
元会長については、横浜地方裁判所第5刑事部(朝山芳史裁判長)が9月20日、上記の実刑判決。判決によると、同社の業務全般を統括していた元会長は、(1)平成17年9月21日、17年6月期において実際には売上高が643億9,546万1,000円、経常利益が5億7,586万円であったにもかかわらず売上高を789億873万5,000円、経常利益を59億3,150万8,000円と記載した連結損益計算書等を掲載した有報を提出し、(2)18年3月6日、公募増資に際して当該有報を参照すべき旨を記載した届出書を提出したほか、(3)18年6月期について同様に虚偽の記載のある有報を提出し、(4)19年6月期決算で債務超過が判明したことを受けて企図された第三者割当増資に係る届出書の提出では当該有報を参照するものとした。
朝山裁判長は、元会長の動機を「本件会社が優良企業であることを装うため、巨額の損失を隠ぺいしたいと考えた」などとしたうえ、不正取引のすべてが元会長の概括的な指示のもとに行われ、これを認識・認容していたと認定。各不正取引の手口も巧妙・悪質であるほか、粉飾金額が多額であり投資家・債権者にも大きな損害を与えたこと、成長企業を装う思惑ないし虚栄心から独断で循環取引等を指示し、これを隠蔽する手段に訴えた元会長の態度は「およそ企業コンプライアンスを無視するものであり、上場企業の経営者にあるまじき態度」であるなどとし、実刑を言い渡している。
元副会長は同部において「従属的な立場にある」と認定、執行猶予が付された。
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(週刊「T&A master」429号(2011.12.5「今週のニュース」より転載)
(分類:会社法 2012.2.10 ビジネスメールUP!
1644号より
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