課税当局、LED電球交換費用の取扱いで画一的見解示さず
損金処理に際しては慎重な検討が必要に
蛍光灯からLED電球に交換した場合のLED電球の取得費・工事代金の取扱いについて、現在、課税当局から明確に取扱いは示されていない。当局内では、法人の所有する工場や事務所の蛍光灯をLED電球に交換した場合のLED電球の取得費、取替えに必要な工事代金について、少額の減価償却資産、資本的支出との関係を検討している模様。しかし、課税当局として画一的な見解は出しておらず、LED電球の取得費・工事代金の損金処理の判断に際しては、慎重な検討が必要となる。
当局が検討するLED電球交換の事例
建物の蛍光灯をLED電球に交換した場合、LED電球の取得費、取替えに必要な工事代金の税務上の取扱いに疑問が生じており、課税当局内においても、LED電球への交換費用に関する検討が行われている模様だ。具体的には、法人が電気代の節約等の理由から、当該法人の所有する事務所、工場の蛍光灯(特に支障なく使用可能な状態)をLED電球に取り替えた場合で、LED電球の取得に要した費用の総額が1,000万円、別途工事代金として100万円支出したという事例だ(LED電球取得費の内訳は下掲参照)。
・工場用…LED電球1個当たり40,000円程度、総個数約200個=800万円 ・事務所用…LED電球1個当たり20,000円程度、総個数約100個=200万円
※ 工場用のLED電球取替えにあたっては、工事(LED電球を取付け可能にする工事)が必要であり、別途工事代金100万円を支出。 |
取得価額の判定単位が問題に
上記の場合のLED電球の取得費および工事代金について、課税当局は、少額の減価償却資産および資本的支出への該当性を検討している。
少額の減価償却資産には、法人が事業供用した減価償却資産で、取得価額が10万円未満のものが該当し、当該法人がその資産の取得価額相当額を事業供用日の属する事業年度において損金経理した場合、その金額が損金算入可能となる(法令133条)。少額の減価償却資産10万円未満の判定における取得価額には、当該資産を事業供用するために直接要した費用の額が含まれる(法令54条)。
LED電球の交換費用が少額の減価償却資産に該当するか否かにおいては、LED電球の取得価額の判定単位が問題となる。この点、法基通7−1−11(少額減価償却資産または一括償却資産の取得価額の判定)は、取得価額が10万円未満であるかどうかについて、「通常1単位として取引されるその単位、例えば、機械及び装置については1台又は1基ごとに、工具、器具及び備品については1個、1組又は1そろいごとに判定し、……」と定めているが、当局からLED電球の判定単位について、明確な基準は示されていない。
資本的支出に係る規定と例示は
法人が支出する金額のうち、その支出により、固定資産の取得時にその資産の通常の管理または修理するものとした場合に予想される当該資産の使用可能期限を延長させる部分に対応する金額、当該資産の価額を増加させる部分に対応する金額については、修理、改良その他いずれの名義をもってするかを問わず、資本的支出となり損金算入が不可となる(法令132条)。
この資本的支出の例示として、法基通7−8−1は、(1)建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額、(2)用途変更のための模様替え等改造または改装に直接要した費用の額、(3)機械の部分品を特に品質または性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額を掲げている。
当局で検討も明確な取扱い示さず
前述のとおり、蛍光灯からLED電球に交換した場合のLED電球の取得費・工事代金の取扱いについて、課税当局では、上記の少額の減価償却資産、資本的支出該当性について検討を行っている模様。
しかし、本誌取材に対し、当局は、「画一的な見解は出ていない」とし、明確な取扱いを示していない。したがって、LED電球の取得費・工事代金の損金算入の可否判断に際しては、慎重な検討が必要となる。
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(週刊「T&A master」418号(2011.9.12「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2011.11.7 ビジネスメールUP!
1609号より
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