無価値資産の無対価分割では寄附金課税が発生する場合も
分割対象資産の経済価値が零以下で無対価となる分割
平成22年度税制改正では、これまで税法上税制適格分割と解釈することが困難であった「無対価分割」の概念が創設され、法人税法上も明確に税制適格再編に該当し得ることとなったが、分割の対象となる資産等の価値が零以下のために無対価となる分割においては、寄附金課税の問題が生じる可能性がある。
寄附なら譲渡損益調整資産の管理等が発生
平成22年度税制改正前においては、分割対価を交付しない無対価分割は法人税法上想定されていなかったが、実務上は無対価分割が行われているという実態があった。そこで課税当局からは、「無対価分割であっても税制適格分割に該当し得る」とする質疑応答事例が明らかにされていたところだ(子会社を分割承継法人とする分割において対価の交付を省略した場合の税務上の取扱いについて、ほか)。
こうしたなか平成22年度税制改正では、無対価分割の直前に分割法人が分割承継法人の株式等を保有している場合や、無対価分割の直前に分割法人が分割承継法人に株式等の全部を保有されている場合には「分社型分割」、分割法人が分割承継法人の株式等を保有していない場合には「分割型分割」との定義が置かれ(法法2十二の九、十二の十)、法人税法上も適格再編に該当し得ることとなっている。
この無対価分割の定義規定においては、グループ内の分割が条件とされていない。したがって、法人税法では、分割の対象となる資産等の経済価値がないために無対価となる分割も想定されているものと考えられる。このことは、無対価分割においても、寄附金課税の問題が生じ得ることを示していると考えられるので要注意だ。
この点については、上記に紹介した質疑応答事例の最後の部分の(注)で、「……分割法人は分割対価として移転純資産価額に相当する株式の交付を受けているのと同様の状況にあり、対価の省略を行ったことをもって親会社(分割法人)から子会社(分割承継法人)に対する経済的利益の供与があったとは認められず、寄附金課税の問題は生じません」との断り書きがあることからもうかがうことができる。これは、資産等の価値が零以下のため無対価となる分割でも寄附金課税の問題が生じる場合があることを示しているといえるからだ。
仮に完全支配関係にある法人間での無対価分割について寄附金課税の問題が発生した場合には、グループ法人単体課税制度(法法61の13)の適用により課税が繰り延べられたうえ、新寄附金税制(法法25の2@、37A)が適用され、譲渡損益調整資産の管理が発生するほか、子会社株の簿価について「寄附修正」も必要になる(法令9@七)。
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(週刊「T&A master」363号(2010.7.19「今週のニュース」より転載)
(分類:税制改正 2010.9.1 ビジネスメールUP!
1445号より
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