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寄附なら譲渡損失計上は不可、配当なら会社法違反のリスクも
100%親子会社間での金銭交付は配当or寄附?

 100%親子会社間において、子会社が親会社に対して金銭を交付するケースがあるが、この場合、当該金銭交付が「寄附」に当たるのか、あるいは「配当」に当たるのかが問題となる。
  仮に寄附に該当する場合には、「寄附修正」の適用により、寄附により価値が下がった子会社株式を売却することで親会社が譲渡損失を計上するような租税回避行為は封鎖される。一方、配当に該当した場合には、寄附修正のような仕組みはなく、売却損計上は可能だが、そもそも、子会社株式について譲渡損失が発生するほどの配当は会社法違反となる恐れがあろう。

寄附修正導入で租税回避行為は封鎖
  100%親子会社間において、子会社が親会社に対し金銭を交付する場合、これを「寄附」とみるのか、あるいは親会社への「配当」とみるのか議論のあるところだ。
  仮に寄附とみた場合には、平成22年度税制改正で導入された新寄附金税制に基づき、寄附を行った子会社において全額損金不算入(法法37A)、受贈益を得た親会社において益金不算入(法法25の2@)となり、さらに両社の株式の簿価について「寄附修正」が適用されることになる。子会社株式についてみると、親会社が子会社に寄附を行わせた結果として価値が下がった子会社の株式を売却することで親会社が譲渡損失を計上するような租税回避を防止する観点から、寄附相当分、子会社株式の簿価が引き下げられることになる(法令9七、119の3E)。
  これに対し、配当とみた場合には寄附修正のような仕組みは存在しないため、配当により価値が下がった子会社の株式を売却すれば、親会社において譲渡損失が発生することになる。ただ、そもそも、子会社株式について譲渡損失が発生するほどの配当は「分配可能額」を超える配当(会社法461A)として、会社法違反となる恐れがあろう。

事業上の背景の有無が判断のポイント
  「寄附」「配当」のいずれに該当するかの判断については、当該金銭の交付をどのような背景や立場で受けるかがポイントとなろう。すなわち、事業上の背景のなかで金銭交付を受けた場合には「寄附」、株主としての立場で金銭交付を受けた場合には「配当」という整理になると考えられる。
  たとえば、子会社が親会社より経営指導を受け、その対価として経営指導料等の名目で子会社から親会社に対して金銭が交付された場合には「寄附」となり得る一方、そのような事業上の背景がなく単に金銭が交付された場合には、親会社が株主としての立場で金銭を得たという性格が強くなり、「配当」に該当するものと考えられる。

 

 

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週刊「T&A master」359号(2010.6.21「今週のニュース」より転載)

(分類:税務・会社法 2010.8.4 ビジネスメールUP! 1435号より )

 

 
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