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返還を要しないことが確定した時に権利確定
有料老人ホームが受領する入居一時金の収益計上時期

 東京地裁民事第2部(岩井伸晃裁判長)は4月28日、有料老人ホームを運営する原告が入居者から受領した入居一時金の収益計上時期について、その収入となる権利は、返還を要しないことが確定したときに実現し、権利として確定するなどと判示。入居者の平均居住年数、平均余命等を勘案して定める一定の年限内の各事業年度に益金計上されるべきとする原告の主張を認めず、更正処分取消請求を棄却する判決を言い渡した(平成19年(行ウ)第626号)。

入居一時金(終身入居金)と返済条項の概要
  有料老人ホームを運営する原告が、入居者との間で交わす終身の入居を予定する契約(終身入居契約)は、入居者が、原告に対し、入居一時金(終身入居金)を支払い、原告が入居者に対し、原則として入居者の死亡まで、施設を利用させ、介護等の役務を提供することを主な内容とするもの。
中途終了返済条項
  この終身入居契約は、@入居者が死亡したとき、A入居者が解約を申し出たとき、またはB入居者が同契約の条項に違反したときなど、一定の事由に基づき原告が契約を解除したときに終了する。
  また、上記により、終身入居契約が入居日から5年以内に終了したときには、原告が、入居者に対し、終身入居金の一部の「返済」として、契約書別表に定める額(月単位で計算した入居期間に応じて逓減する額)を返金する(中途終了返済条項)。
短期解約返済条項・返済保証期間
  終身入居契約が、入居日から3か月以内に入居者の解約の申出または入居者の死亡により終了した場合で、専用住居が明け渡されたときには、原告が、入居者に対し、終身入居金の一部の「返済」として、終身入居金から@専用住居の明渡しまでの日割りの施設利用料相当額、A日割り計算に基づく、食事に関する一切の費用、専用住居内における水道、電気等の使用料および電話料、B専用住居の原状回復のための費用を除いた全額を無利息で返金する(短期解約返済条項)。
  ただし、終身入居契約のなかには、中途解約返済条項に基づき終身入居金の一部額が返金される入居後「5年」の期間(返済保障期間)を「10年」と定めるものがあり、また、短期解約返済条項の定めのないものもある。

賃貸借契約における保証金等に類する
  主な争点は、入居一時金の収益の帰属すべき事業年度。
  岩井裁判長は、まず終身入居金の特徴について、前頁下掲のように指摘している。そのうえで、当該終身入居金が、一定期間の役務提供ごとに、それと具体的な対応関係をもって発生する対価からなるものではなく、役務を終身にわたって受け得る地位に対する対価であり、いわば賃貸借契約における返還を要しない保証金等に類するというべきであると判断。もともと、返済保障期間内に解約された場合に返還を要することになる終身入居金の一部額が役務を提供すべき期間の残存期間に対応するものではないことからも、終身入居金が、役務の一定期間の提供ごとに、それと具体的な対応関係をもって発生する対価からなるものとみることはできないとした。

役務の提供の有無等にかかわりなく
  そして、このような終身入居金に係る権利の特質から、当該終身入居金の収入の原因となる権利が確定する時期は、役務の提供の有無等にかかわりなく決められるべきであると指摘。
  当該終身入居契約の定めによれば、当該終身入居金は、返済保障期間内に解約されたときには、中途終了返済条項に基づきその期間内で逓減する一部額の返済を要し、返済保障期間の経過後に解約されたときは、その全額の返還を要しないことから、その収入の原因となる権利は、期間の経過により、その返還を要しないことが確定した額ごとに、その返還を要しないことが確定した時に実現し、権利として確定するものとした。

前事業年度末の返金額との差額を益金計上すべき
  具体的な益金計上額については、返済保証期間を含む各事業年度において、@当該事業年度末に解約等があったと仮定した場合の当該終身入居金の返金額(当該事業年度内に実際に解約等がされた場合、実際の返金額)、A当該事業年度の前の事業年度末に解約等があったと仮定した場合の当該終入居金の返金額(当該事業年度の前の事業年度末に契約が未締結の場合、終身入居金の全額)との差額が、当該事業年度において返還を要しないことが確定した額であることから、その額を当該事業年度の益金として計上すべきことになると判示した。
  そして、上記の計算において、短期解約返済条項の適用がある場合には、当該終身入居金の返金額は、その全額であると考えるべきことになるとしている。

 

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(以上、最新順)  

週刊「T&A master」358号(2010.6.14「SCOPE」より転載)

(分類:税務 2010.7.28 ビジネスメールUP! 1432号より )

 

 
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