未公開 裁決事例紹介
国内に生活の本拠なく、日本の非居住者に該当
審判所、所得税の決定処分等を全部取消し
○日本国籍を有しない審査請求人(以下「請求人」という)が国外在留中に得た報酬について、請求人は日本の居住者であり課税所得に当たるとして原処分庁が行った所得税の決定処分等が取り消された事例(東裁(所)平21第22号)
基礎事実
請求人は、日本国籍を有しない者である。請求人は、在留資格を人文知識・国際業務、在留期間を1年等として日本に入国後、在留資格を日本人の配偶者等、在留期間を3年、在留期限を平成16年11月とする在留資格変更許可を受け、同年11月、3年間の在留期間の更新を許可された。
請求人は、各取引先との間で、各コンサルティング契約を締結し、当該契約に基づき業務を提供していた。請求人は、本邦滞在期間中は、○○に家族と共に起居しており、取引先への業務提供を開始するために平成16年9月13日に日本を出て(以下「本件出国」という)から、業務提供を終了して平成18年6月8日に入国するまでの間(以下「本件期間」という)においても水道、電気およびガスの使用契約は解約されることなく使用料金が支払われていた。
争点および主張
争点は、請求人がA国在留中も日本に住所または居所を有していたか否か。争点における当事者の主張は、次頁表のとおり。
審判所の判断
イ 住 居
本件期間中、請求人の日本における滞在は、月に1回程度、主として週末を含む1日間から5日間にすぎないものであり、○○は、妻が勤務先から社宅として賃借していたものであって、生活用動産が運搬されていなかったのも、妻の同所での生活に必要であったためと推認される。
請求人は、滞在日数をはるかに上回る日数をA国で過ごし、請求人が起居していた各サービス・アパートメントの契約は1か月更新ではあるものの、そこに15か月居住を続けていたことなどを考慮すると、○○が請求人の日本滞在中の生活拠点であったことは認められるものの、請求人の生活の本拠が○○にあったものと直ちに判断することまではできない。
ロ 職 業
本件各コンサルティング契約の契約期間は、本件期間のうち平成17年7月30日から同年10月2日までの期間を除く全期間であり、請求人は、当該期間の大部分をA国で過ごしていることからすると、請求人は、主としてA国において、各コンサルティング契約に係る業務を提供していたものと認めるのが相当である。
ハ 生計を一にする親族の所在
請求人の妻のA国滞在は一時的なものであったと認めるのが相当である。
しかしながら、妻は、日本国内に職業を持つ会社員であり、育児休暇中においても○○の貸与を受けそこに居住を続けたのは、あくまで妻の勤務先の従業員としての選択・判断であると認められ、その選択・判断が、本件期間における請求人の生活の本拠を確保することを目的としてなされたものとは認められないから、妻が日本国内に居住していたことが、請求人の生活の本拠が○○にあったことを裏付ける重要な事実であるとまでは認め難い。
ニ 資産の所在
通常、預金口座を管理するために、日本国内に生活の本拠を置く必要性はなく、実際に、請求人は、A国において現金を引き出すなど、本件口座を日本以外の国においても使用している。
他に、請求人が、自ら日本国内に居住して、使用・管理することが必要な資産を日本国内に所有していたとは認められないから、日本国内の資産の所在をもって、直ちに請求人の生活の本拠が○○であったとまでは認められない。
ホ 結 論
上記イないしニの各点を総合勘案すれば、本件期間において、請求人の生活の本拠が○○にあった、あるいは、○○に相当期間継続して居住していたと認定するのは困難である。
したがって、請求人は、所得税法2条1項5号に規定する非居住者といわざるを得ない。
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キーワード 「非居住者 所得税」⇒171件
(週刊「T&A master」345号(2010.3.8「未公開 裁決事例紹介」より転載)
(分類:税務 2010.5.10 ビジネスメールUP!
1399号より
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