産業再生機構の場合と同様の取扱いに
企業再生支援機構による債権放棄等の税務上の取扱い
国税庁は平成21年11月6日、「株式会社企業再生支援機構が買取決定等を行った債権の債務者に係る事業再生計画に基づき債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて」と題する文書回答を公表した(今号29頁参照)。企業再生支援機構からの事前照会に回答するものである。
国税庁によれば、企業再生支援機構が関与して策定する事業再生計画に基づき債権放棄等が行われた場合には、債務者の有する資産に係る評価益および評価損は益金算入および損金算入の規定の適用を受けることができるとしている。また、適用を受ける事業年度において、期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して計算した金額を損金算入することができる。産業再生機構が関与して策定された再生計画により債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いと同様のものとなっている。
機構が関与した事業再生計画による債権放棄等
企業再生支援機構は、株式会社企業再生支援機構法(平成21年法律第63号)に基づき、平成21年9月28日に設立されたもので、地方の中小企業等の事業再生支援を目的としている。
企業再生支援機構に設置された外部有識者を含む意思決定機関である企業再生支援委員会が、事業や財務を再構築する「事業再生計画」の策定支援や債権者などの利害関係者の調整などを行う。支援対象となる企業については、同委員会が企業再生支援機構支援基準に従って支援を決定する。支援決定後の再生支援の流れは図のとおりである。

期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先
今回の事前照会は、同機構が関与して策定された事業再生計画に基づき、債権放棄等が行われた場合の債務者または債権者における税務上の取扱いおよび代表者等の個人から私財提供等が行われた場合の当該個人の所得税の取扱いを問うものとなっている。
国税庁によれば、企業再生支援機構の関与のもと、「企業再生支援機構の実務運用標準」(以下、実務運用標準)に従って事業再生計画が策定される。事業再生計画については、実務運用標準が、@一般に公表された債務処理の手続を行うための準則であること、A公正かつ適正な準則であること、B特定の者(政府関係金融機関、株式会社企業再生支援機構等を除く)が専ら利用するものでないこと、C公正な価額による債務者の有する資産および負債の価額の評定に関する事項が準則に定められていること、D事業再生計画が@〜Cまでを満たす準則に従って策定されたものであることなど、再生計画認可の決定に準ずる事実(法令24条の2第1項)の要件を満たすことになる。
したがって、債務者の有する資産に係る評価益および評価損は益金算入することができるとしている(法法25条3項、33条4項)。また、期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して計算した金額については損金に算入可能である(法法59条2項)。
法基通9−4−2の合理的な再建計画に該当
一方、金融機関等の債権者における税務上の取扱いに関し、企業再生支援機構の関与した事業再生計画については、法人税基本通達9−4−2の合理的な再建計画に該当すると判断。債権放棄等による経済的利益の供与額は寄附金の額に該当せず、税務上損金の額に算入することができる。
支援企業の代表者等に係る税務上の取扱いは?
また、企業再生支援機構が関与して策定された合理的な事業再生計画に基づき債権放棄等が行われる際に、支援する企業の代表者等が保証債務の履行により取得した求償権を書面により放棄した場合については、@求償権の放棄は、株式の消却や経営者の退陣など株主・経営者責任の明確化の観点から行われるものであり、合理的な事業再生計画により他の債権者等が支援対象者に対して行う債権放棄等を行う前提となっていること、A支援対象者は自力による経営の再建が困難な状況にあり、仮に求償権の放棄に応じず合理的な事業再生計画が成立しなければ、支援対象者が倒産に至ることなどを考慮すれば、当該求償権の放棄は、原則として「求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったとき」(所法64条2項)に該当すると判断。代表者等について保証債務の特例の適用があるとしている(下掲コラム参照)。
担保権の消滅等があっても寄附金課税はなし
また、金融機関等および債権を買い取った企業再生支援機構が主たる債務者である支援対象者から残債務を回収できる見込みにある場合には、残債務に付されている担保権の消滅や個人保証の解除を行ったとしても、偶発債務の免除等に過ぎないと判断。原則として金融機関等、債権を買い取った企業再生支援機構および支援対象者に寄附金課税(法法37条)は行われないとしている。
MEMO
求償権が行使不能な場合とは?
国税庁が公表している「保証債務の特例における求償権の行使不能に係る税務上の取扱いについて」(平成14年12月25日付)と題する事前照会に対する文書回答では、法令等の手続によらない求償権の放棄について、法人が求償権の放棄を受けた後も存続し、経営を継続していたとしても、@その代表者等の求償権は、代表者等と金融機関等他の債権者との関係からみて、他の債権者の有する債権と同列に扱うことが困難である等の事情により、放棄せざるを得ない状況にあったと認められること、Aその法人は、求償権を放棄(債務免除)することによっても、なお債務超過の状況にあることに該当すると認められるときは、その求償権は行使不能と判定することとされている。
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キーワード 「企業再生支援機構」⇒19件
(週刊「T&A master」330号(2009.11.16「SCOPE」より転載)
(分類:税務 2010.2.5 ビジネスメールUP!
1363号より
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