定期同額給与は中小企業の実態に合わないね
「法人税法は役員が率先して報酬カットすることを禁じているのさ。」金吉
石部金吉税理士は、顧問先の社長から、期中での社長報酬の減額の手続について相談を受けているようです。
「お父さん、国税庁のホームページをみながらいろいろと検討しているようだけど、何を確認しているの?」
石部みどりさんは、厳しい表情で仕事をしている石部金吉税理士にたずねています。
「関与先の社長から従業員の決算賞与の支給を見送ったこともあり、社長の報酬を減額することの相談があったんだよ。」
石部金吉税理士の関与先も不況の波を受けているようです。
娘「それで国税庁が『役員給与に関するQ&A』で公表している『業績悪化改定事由』に該当することになるかどうかを真剣に検討しているのね。」
父「中小企業では、社長が大半の株式を保有していることが多いから株主との関係を理由にすることはできないし、債権者に迷惑をかけるわけでもないんだよ。だけど、例年従業員に対して支給してきた決算賞与の支給を業績不振を理由に取り止めているんだから、社長は責任を感じて自らの役員給与を減額しようとしているんだね。」
娘「従業員の賞与を一律カットしたような場合については、『Q&A』の前に出された『改正通達の逐条解説』で例示されていたから大丈夫だと思うわ。」
父「そうだよね。俺もどこかに書いてあるような気がして調べていたんだよ。それにしても、役員報酬の減額についてまで規制しようとするのは中小企業の経営の実態にマッチしていないと思うんだよ。」
娘「定期同額給与の規定がおかしいと思っているのね。」
父「不況になってはっきりしてきたことなんだけど、不況になると真っ先に非正規雇用が整理され、正社員だって賞与や時間外手当がカットされるんだよ。役員報酬については、損金算入の問題があるから、賞与分も含めて毎月の報酬に配分しているところが多いと思うけど、役員の報酬が最後にカットされるとすれば、それはおかしいと思うんだ。役員が率先して報酬カット(痛み)を受けなければ、役員が従業員の人心を掌握することができないし、法人税法の規定では、経営モラルを守ることもできないのさ。」
娘「そうよね。役員報酬の減額は、法人所得を増やす方向に働くのよね。法人所得の利益調整になる場合があるとしても、役員個人への所得税課税が行われるわけだから、役員給与を定額とする考え方は固すぎるわよね。」
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キーワード 「定期同額給与」⇒81件
(週刊「T&A master」303号(2009.4.20「石部家の人びと―父と娘の税理士問答」より転載)
(分類:その他 2009.6.22 ビジネスメールUP!
1277号より
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