負ののれんは導管性要件の判定から除外、課税所得にも加算されず
平成21年度税制改正で導管性要件が大幅緩和
平成21年度税制改正では、リートの導管性要件が「(税務上の)配当可能所得の90%超の配当」から「(会計上の)配当可能利益の90%超の配当」に改正されるとともに、リート同士の合併の際に生じた「負ののれん」を配当可能利益に含めないこととされるが、当該負ののれんは、配当を支払った後の課税所得からも除外されることが本誌取材で確認された。
税務と会計の差異による課税リスクが消滅
リートにおいては、「配当可能所得」の90%超を投資家に分配することにより、その分配に充てる所得の損金算入が認められている。ただ、ここでいう配当可能所得とはあくまで税務上のものを指しており、税務と会計の取扱いの差異から、会計上の「配当可能利益」とは一致しないことが少なくない。このため、導管性要件を満たせず思わぬ課税を受けることが考えられ、リートにとってリスクとなっている。
その一例が、「のれん」を巡る税務と会計の取扱いの違いだ。最近、金融機関がリートに貸付金の返済を迫り、リートは借金返済のため投資不動産を売却する動きがあるが、この場合、不動産市況の低迷のなか、売却損が出るケースが多い。リートは、この売却損をカバーして配当を捻出するため、「負ののれん」の計上を狙い他のリートとの合併を模索する動きもある。ただ、税務上、のれんの償却期間は「5年間」とされているのに対し、会計上は「20年以内、均等額以上で償却」とされているほか、会計上ののれんは「合併契約日」を基準に算定されるのに対し、税務上ののれんは「合併の日」を基準にすることとされている。このような税務と会計の差異が、リート同士の合併の障害になっているとの声もある。
こうしたなか、平成21年度税制改正では、これまで「(税務上の)配当可能所得の90%超の配当」としていた導管性要件を、「(会計上の)配当可能利益の90%超の配当」に改正しており、改正後は「税務と会計の差異」により導管性要件を満たさなくなるリスクはなくなる。
また、負ののれんを導管性要件の判定から除外した点も注目される。「正ののれん」が費用となるのに対し、「負ののれん」は利益となるが、平成21年度税制改正では、導管性要件の判定上、負ののれんを上記「配当可能利益」に含めないこととしている。これにより、リートは負ののれんを除いた金額の90%を配当すれば導管性要件を満たせることになり、要件充足のハードルは下がることになる。
さらに、負ののれんは、配当を支払った後の課税所得に加算されるのか否かも焦点となっていたが、本誌取材により、課税所得には加算されないことが確認された。
※
記事の無断転用や無断使用はお断りいたします
⇒著作権等について
T&Amaster 読者限定サイト
検索結果(注:閲覧には読者IDとパスワードが必要になります)⇒ID・パスの取得方法
キーワード 「リート」⇒93件
(週刊「T&A master」297号(2009.3.2「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2009.5.13 ビジネスメールUP!
1260号より
)
|