欠損金の繰戻し還付の復活に注目
「あまり怖がらずに繰戻し還付請求をするべきだと思っているよ。」金吉
法人顧客に新年のあいさつ回りをしている石部金吉税理士には、欠損金の繰戻し還付の相談が寄せられているようです。
「みどり、法人の顧客を回ってみたんだけど、今期の業績は厳しそうだね。赤字を計上して繰戻し還付する場合の問題について相談されたよ。」石部金吉税理士は、昨日までの優良企業が赤字申告を検討している状況から不況の厳しい現実を受け止めているようです。
「欠損金の繰戻し還付は平成21年度税制改正大綱にあげられた復活項目ね。私はまだ法人税の繰戻し還付請求書を作成したことがないんだけど、請求書の作成は難しいのかしら?」石部みどり税理士は欠損金の繰戻し還付請求の実感がわかない様子です。
父「還付請求書の作成自体は難しいわけではないんだよ。僕も忘れかけてしまっているけど、面倒なのは税務調査を呼び込むことになりやしないかという問題なんだよ。」
娘「繰戻し還付請求書を提出すると、税務署の調査があるの?」
父「繰戻し還付請求の場合には、調査したところによると規定されているんだよ。繰戻し還付というのは前事業年度が黒字申告で、当事業年度が赤字の場合に行われるわけだから、中小企業にあっては、比較的優良な企業が対象になるわけで、経営者の税務調査への危機感も大きいんだよ。」
娘「毎年赤字申告の会社は、繰戻し還付の対象にはならないってわけね。」
父「そうはいっても、今の不況は急激な景気の冷込みによるものだから、繰戻し還付の対象となる中小企業も相当数あると思うね。」
娘「当期が赤字になったからといって繰戻し還付請求をしなくたっていいのよね。」
父「そうだね。繰戻しせずに欠損金を繰越控除の対象とすることもできるわけだけど、資金繰りのことも考えると、赤字なのに繰戻し還付請求をしないことも不自然のような気がするのさ。」
娘「中小企業の経営者はそんなに税務調査がいやなのかしら?」
父「まあ、人それぞれとしか言いようがないと思うよ。だけど、多くの中小企業が繰戻し還付を行うことになれば、税務署もそればかりを調査しているわけにはいかないと思うんだよ。それに、通常の法人税申告の調査に比べれば、簡易な調査になるともいわれているんだね。いずれにしても、税理士からすると、顧客が心配していることだし、繰戻し還付請求を行った場合の税務署の対応がとても気になるってことだね。」
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キーワード 「欠損金の繰戻し還付」⇒31件
(週刊「T&A master」290号(2009.1.12「石部家の人びと―父と娘の税理士問答」より転載)
(分類:その他 2009.3.13 ビジネスメールUP!
1239号より
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