日本版ESOP、現行会社法・税法の枠組みのなかで実現可能
会計については今後検討
追加経済対策に盛り込まれた日本版ESOP(従業員株式所有制度)の実現にあたり、会社法、会計、税法上の取扱いが問題となっていたが、経済産業省は平成20年11月17日、「新たな自社株式保有スキームに関する報告書」と題する報告書を公表。会社法、税法については現行制度のままで、実現に向け支障がないことが確認された。一方、会計面については、今後、企業会計基準委員会が検討を行う。
ビークルによる株の買付け=自己株取得
従業員に自社株を付与するための仕組みとして追加経済対策に盛り込まれたESOPだが、導入にあたって、会社法、会計、税法上の取扱いが問題となっていた。
会社法上は、@ビークル(子会社に該当する場合)がESOP導入会社(親会社)の株式を取得することが、親会社株式取得規制や自己株式取得規制に抵触するか、A導入企業がビークルに対して一定の財政的支援(従業員に対する奨励金の支給等)を行うことが、株主の権利の行使に対する利益供与や株主平等原則等に抵触するかが問題となっていたが、報告書では、これらの問題に抵触しないとする見解が示されている。
会計上は、たとえば、中間法人や匿名組合、信託について、連結財務諸表上、子会社に該当するかどうかが大きな論点となる。現行、企業会計基準委員会が公表する信託の会計処理に関する実務上の取扱いなどがあるものの、ESOPに関する明確な取扱いはない状況だ。このため、同委員会において、ESOPに関する会計上の取扱いを検討することになる(本誌282号12頁参照)。
税務上は、信託税制等との関連が問題となる。ビークルが金融機関に支払う利子や会社に支払う保証料については、当該信託財産に帰せられる収益および費用は「みなし受益者」である会社の収益および費用とみなされることから(法法12条1項2項、所法13条1項2項)、会社においてそれぞれ損金となる。信託終了まで従業員持株会に参加するなど一定要件を満たす従業員が現れた場合、受益権は法人から従業員に移るが、当該受益権は従業員に対する「給与」として法人においては損金算入、従業員においては給与所得として課税が行われる。
このほか、ESOPでは、税務上「みなし受益者」である会社(委託者)が株式を所有しているものとみなされるため、ビークルが市場から会社の株式を買い付けたとしても、税務上は会社が市場から自己株式を取得したものとして取り扱われる。ビークルへの剰余金の配当についても、税務上は同一法人内での資金移動にすぎず、配当は行われなかったものとして取り扱われ、また、ビークルから従業員持株会等に株式が譲渡された場合には、会社が自己株式を処分する取引に該当する(法令8条1項1号)。
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(週刊「T&A master」284号(2008.11.24「今週のニュース」より転載)
(分類:その他 2009.1.28 ビジネスメールUP!
1221号より
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