法人税減額に伴う地方税減額更正の還付加算金は納付の日の翌日から
地方税「決定」と「申告納付」との還付加算金の差異は不合理
最高裁判所第二小法廷(中川了滋裁判長)は10月24日、都民税の減額更正により生じた過納金に伴う還付加算金の起算日が争点となっていた事案の上告審で、「納付の日の翌日から還付加算金を加算すべきものと解するのが相当」と判示したうえで、審理を東京高裁に差し戻す判決を言い渡した。
事案の概要
本件は、都民税等の減額更正により生じた過納金の還付を受けた上告人が、その際に支払われた還付加算金は起算日を誤って算定されており、正当な金額の一部しか支払われていないと主張して、被上告人(東京都)に対し、還付加算金の残額等の支払いを求める事案である。
前提事実
(1)上告人はドイツの法人であり、東京都内に東京連絡事務所を有していたが、後記(2)アの決定等を受けるまで法人税及び都民税等の申告納付をしていなかった。
(2)ア 所轄税務署長は、平成10年6月、上告人に対し、上記事務所が「日独租税条約」の定める恒久的施設に該当するものとして、同4年から同7年までの3事業年度にわたり,法人税の決定及び無申告加算税の賦課決定を行った。
イ 上告人は、同10年7月、所轄都税事務所長(以下「処分庁」という。)に対し、上記3事業年度分の都民税等の確定申告書を提出し、本税等を納付した。
(3)ア 所轄税務署長は、平成13年6月、上告人に対し、同8年7月から同10年までの3事業年度にわたり、法人税の決定及び無申告加算税の賦課決定を行った。
イ 上告人は、同13年7月30日、処分庁に対し、上記3事業年度分の都民税等の確定申告書を提出し、本税を納付した。
(4)ア 上告人は、平成10年8月付で、日独租税条約に基づく相互協議の申立てを行ったところ、同15年7月ころ、上告人の東京連絡事務所が恒久的施設に該当するものであることが確認されるとともに、同事務所に帰属する所得について再計算が行われた。
イ 所轄税務署長は、同年9月付で、上告人に対し、上記相互協議の結果に従い、本件法人税決定に係る法人税について減額更正をした。
ウ 処分庁は、同16年1月26日、上告人に課すべき都民税の法人税割額について、本件法人税減額更正後の法人税額を課税標準として税額の計算を行い、減額更正をした。
エ 処分庁は、同年3月16日、上告人に対し、本件都民税減額更正により生じた過納金について還付を行った。また、これに付する還付加算金については、地方税法17条の4第1項4号、地方税法施行令6条の15第1項1号を適用して、本件都民税減額更正があった日の翌日から起算して1か月を経過する日の翌日を還付加算金の起算日として金額を計算し、これを支払った。
争 点
争点は、本件前提事実における都民税の還付加算金の起算点が、「納付の日の翌日(上告人の主張)」か、それとも「減額更正があった日の翌日から起算して1か月を経過する日の翌日(処分庁の主張)」かである。
下級審の判断
本件は、当初都民税及び事業税の減額更正により生じた過納金の還付に伴う還付加算金の算定の起算日が争われていた。
第一審の東京地裁は、都民税に関しては、本件申告は義務修正申告によって申告書を提出した場合と同視するのが相当であるから、還付加算金の起算日は「納付の日の翌日」と解すべきとした。
また、事業税に関しては、原告(上告人)が保険会社であり、課税標準が「収入金額」であり、法人税との相関関係がなく、自己の判断で任意にした申告に起因するものとして、還付加算金の起算日は「減額更正があった日の翌日から起算して1か月を経過する日の翌日」と解すべきとした。
控訴審の東京高裁は、本件申告をもって義務修正申告に当たるということはできないと判示し、還付加算金の起算日は「減額更正があった日の翌日から起算して1か月を経過する日の翌日」というべきとした。
最高裁の判断
中川裁判長は次のように判示し、原判決を破棄し、還付加算金の算定等の点について、東京高裁に審理を差し戻した。
「(前略)ところで、本件申告は、都民税について先行する税額確定行為が存在しないため、法53条10項又は法321条の8第10項所定の義務修正申告に当たるということはできず、本件法人税決定を受けた上告人が、これらの条項に基づき、都民税の申告納付をすべき義務はなかったものである。しかしながら、本件申告は、それ自体は法令により義務付けられたものではなかったとしても、本件法人税決定を受けたことを契機として、法の定めに従い同決定により確定した法人税額を課税標準として行われたものであり、上告人が自らの計算により法人税額及び法人税割額を算出したものではなかったのであるから、本件申告により確定した法人税割額が過納となったことにつき、上告人に帰責事由があるということはできない。また、この場合に還付加算金の起算日を納付の日の翌日であると解さないとすると、本件法人税決定に従って都民税の申告納付をした場合の方が、申告納付の措置を採らずに放置して都民税について決定を受けた場合に比べ、還付加算金の算定において著しい不利益を受けるという不合理な結果を生ずることとなる。
以上のような事情にかんがみると、本件過納金の還付に際しては、法17条の4第1項1号の趣旨に照らして、同号の場合と同様に、納付の日の翌日から還付加算金を加算すべきものと解するのが相当である。」
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(週刊「T&A master」281号(2008.11.3「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2008.12.24 ビジネスメールUP!
1211号より
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