信託受益権売買で修繕積立金の信託建物帳簿価額からの減額を認容
審判所、受贈益として益金算入した更正処分を全部取消し
国税不服審判所は、信託受益権の売買に伴い信託不動産に係る修繕積立金を信託建物の帳簿価額から減額したことの可否が争われた事案で、当該修繕積立金が受贈益に当たるとした更正処分等の全部を取り消した(東裁(法)平19第84号)。
原処分庁は修繕積立金の無償取得を主張
請求人は、A信託不動産(鑑定評価額464億円)、B信託不動産(同78億1千万円)に係るA信託受益権およびB信託受益権をXから買い受けた。譲渡契約書のA信託受益権、B信託受益権の売買代金は下表のとおり。Xの経理処理は、各信託受益権の譲渡対価として542億1千万円を計上したほか、各信託受益権の譲渡原価のなかにA信託契約に係る修繕積立金133,474,300円、B信託契約に係る修繕積立金115,520,000円を計上。請求人は信託受益権に係る信託財産の取得価額を各修繕積立金が現預金であることから額面額とし、各信託土地は鑑定価額で評価、売買価額からこれらの額を控除した残額を各信託建物の取得価額とした。
原処分庁は、信託受益権の売買代金欄における土地相当額、建物相当額の売買代金が各信託不動産の鑑定評価額と同額であり、信託受益権の売買代金は信託不動産の適正な評価額で構成されていることから、上記各修繕積立金は対価零円で売買されたものと主張。請求人の各信託受益権取得による資産計上額は、@各信託土地の合計額、A各信託建物の合計額、B信託建物に係る仮払消費税等の合計額、C各修繕積立金の合計額の総合計額55,061,920,800円。負債計上額は、譲渡契約における売買代金の合計額および消費税等の合計額との総合計額54,812,926,500円であり、その差額は無償取得した修繕積立金相当額であることから当該取得価額相当額を益金算入すべきとした。
審判所は、請求人が各譲渡契約により譲渡される信託受益権の目的となっている信託財産の構成物の全部を一括して取得しており、譲渡契約における売買代金は信託受益権の譲渡時における信託財産の構成物の全部を包括した価額とみることになるとした。そのうえで、信託財産のなかに修繕積立金も含まれていると認められる以上、預金口座に積み立てられた修繕積立金の金額がその金額で売買価額に反映されているとみるのが相当などと判断した。

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(週刊「T&A master」270号(2008.8.11「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2008.9.29 ビジネスメールUP!
1177号より
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