国税庁、減価償却制度改正に対応し関係通達を一部改正
資本的支出の取得価額の特例、総合償却資産の除却価額等を明確化
国税庁は7月6日、減価償却に関する法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)を公表した。今回の改正は、平成19年度税制改正のうち減価償却に関する事項について所要の整備を図ったもの。資本的支出の取得価額の特例、総合償却資産の除却価額等について明確化しているほか、耐用年数等の取扱通達の改正では、新たに「付表定率法未償却残額表」を作成、「旧定率法未償却残額表」の整備も行われている(今号32頁参照)。
耐用年数の短縮には再承認が必要な場合も
今回の一部改正では、法人税基本通達、措置法通達(法人税編)、耐用年数等の適用等に関する取扱通達等について改正が行われている。
まず、固定資産の取得価額等に係る改正においては、資本的支出の取得価額の特例(法令55条4項)の適用について、一旦、特例を適用して取得価額および償却限度額の計算をした場合には、その後、転用した追加償却資産に係る償却限度額等による場合を除いて、資本定支出を分離して別々に償却することができないこと(7−3−15の4)、当該特例に規定する追加償却資産のうち種類および耐用年数を同じくするものが3以上あるときは、資本的支出との組み合わせは、法人の選択によること(7−3−15の5)を明確化している。
また、耐用年数短縮の承認を受けている減価償却資産に資本的支出をした場合、この減価償却資産および資本的支出について短縮した耐用年数で償却を行うときには、改めて国税局長の承認を受ける必要があるとしている(7−3−23)。
適格合併等に係る償却限度額の特例を解説
償却限度額関係では、転用資産の償却限度額について、定率法を採用している減価償却資産の転用後の耐用年数が転用前の耐用年数よりも短くなった場合、転用初年度に、転用後の償却限度額が転用前の償却限度額に満たないときには、転用前の耐用年数で償却限度額を計算することができるとしている(7−4−2)。また、資本的支出の取得価額の特例の適用を受けた一の減価償却資産を構成する各追加償却資産のうち、他の用途に転用したものがある場合は、転用に係る追加償却資産を一の資産として転用後の耐用年数により償却限度額を計算するとしている(7−4−2の2)。
そのほか、適格合併等により引継ぎを受けた減価償却資産のうち、被合併法人等においてした償却額の累計額が取得価額の95%相当額に達しているものは、減価償却資産の償却累計額による償却限度額の特例(法令61条2項)の適用において、合併法人等がした償却額の償却額の累計額が取得価額の95%相当額に達している減価償却資産に含まれると明記している(7−4−15)。
未償却残額除却方式が原則に
総合償却資産の除却価額については、これまで総合償却資産の一部について、除却・廃棄などがあった場合、その除却等による損益の計算の基礎となる帳簿価額は、その個々の資産の取得価額の5%相当額(5%除却法)によるとされていた。
しかし、19年度税制改正で、その根拠となる資産の償却可能限度額(取得価額の95%相当額)が廃止されたことから、5%除却法も廃止され、除却等の帳簿価額は、総合耐用年数による未償却残額除却方式によるものとされた(7−7−3)。この場合、個々の資産が特別償却、割増償却、増加償却の規定の適用を受けている場合、これらの償却限度額相当額についても、償却があったものとして未償却残額を計算するとしている(同、注意書き)。
なお、償却額の配賦がなされていない場合の特例として、法人が継続して、個々の資産の個別耐用年数を基礎として未償却残額を計算している場合は、認められることになる(7−7−4)。
取得価額は資本的支出の額を含む
形式基準による修繕費の判定については、修繕費に該当する基準となる、「その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合」の「取得価額」について明確化している。
具体的には、資本的支出の取得価額の特例の適用を受けている場合における取得価額は、一の減価償却資産の取得価額をいうのではなく、旧減価償却資産の取得価額と追加償却資産の取得価額の合計額をいうと明記されている(7−8−4)
少額減価償却資産の取得の関係を明確化
措置法通達の改正では、「少額減価償却資産の取得等とされない資本的支出」が新設されている。
そこでは、法人が行った資本的支出が、資本的支出の取得価額の特例適用を受けたものであっても、法人の既に有する減価償却資産につき改良、改造等のために行った支出であることから、原則として、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(措法67条の5第1項)に規定する取得等にあたらないとしている。ただし、その資本的支出の内容が規模の拡張など、実質的に新たな資産を取得したと認められる場合は、同項の規定を適用することができることになる(67の5−3)。
旧定率法未償却残額表を作成
耐用年数等の適用に関する取扱通達の改正においては、定率法を採用している場合の経過年数の計算を簡便的に行うための、「付表7定率法未償却残額表」を廃止し、新たに、「付表7(2)定率法未償却残額表(平成19年4月1日以後取得分)」を作成している。
また、旧定率法については、償却可能限度額に到達後5年間で1円までの均等償却が可能となったことから、「付表7(1)旧定率法未償却残額表(平成19年3月31日以前取得分)」を整備している。
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キーワード 「総合償却資産」⇒17件
(週刊「T&A master」219号(2007.7.16「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2007.8.31 ビジネスメールUP!
1027号より
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