役員給与、特殊支配同族会社、交際費等の取扱いを明確化
国税庁、平成18年度改正に係る法基通の一部改正を公表
国税庁は3月22日、平成18年度税制改正に対応した「法人税基本通達等の一改正について(法令解釈通達)」を公表した。平成18年度改正で大幅に見直された「役員給与」「特殊支配同族会社の役員給与」「交際費(措置法61条の4関係)」等の取扱いについて明確化が図られている(今号23頁参照)。
非常勤役員への年俸は非該当
今回の通達改正では、役員給与の損金不算入制度における「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」に関する取扱いの明確化が図られている。
まず、定期同額給与の意義では、定期同額給与における「その支給時期が1月以下の一定の期間ごと」である給与とは、あらかじめ定められた支給基準に基づいて、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復または継続して支給されるものをいうとし、たとえば非常勤役員に対し年俸または事業年度の期間俸を年1回または2回所定の時期に支給するようなものは、定期同額給与に該当しないとしている(法基通9−2−12)。
また、法令69条1項2号に規定されている「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」には、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどによる改定は含まれないことを明記している(法基通9−2−13)。
支給額が異なる場合、全額損金不算入に
事前確定届出給与の意義においては、納税地の所轄税務署長へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合は、事前確定届出給与に該当せず、原則として、その支給額の全額が損金不算入となることを明確化している(法基通9−2−14)。
また、法令69条2項(事前確定届出給与の届出)に規定されている「職務の執行を開始する日」とは、たとえば定時株主総会で役員に選任されその日に就任した者および定時株主総会の開催日に現に役員である者は、その定時株主総会の開催日になるとしている(法基通9−2−16)。
包括的な開示も認められる
利益連動給与については、業務執行役員に、法人の役員であっても取締役会設置会社の代表取締役以外の取締役のうち業務を執行する取締役として選定されていない者、社外取締役、監査役、会計参与が含まれないことを明確化している(法基通9−2−17)。算定方法の内容の開示に関しては、業務執行役員のすべてについて、@その利益連動給与の算定の基礎となる利益に関する指標、A支給の限度としている確定額、B客観的な算定方法の内容を開示することとしている。なお、この算定方法の内容の開示においては、個々の業務執行役員ごとに算定方法の内容が明らかになるものであれば、同様の算定方法を採る利益連動給与について包括的に開示しても差し支えないとしている(法基通9−2−19)。
業務主宰役員の判定基準を明確化
特殊支配同族会社の役員給与関係では、業務主宰役員の意義、常務に従事する役員の意義、基準期間に含まれない事業年度等についての明確化が行われている。
まず、業務主宰役員については、会社経営に最も中心的に関わっている役員1人であり、最も中心的に関わっているかの判定は、事業計画の策定、多額の融資契約の実行、人事権の行使等に際しての意思決定の状況や役員給与の多寡等を総合的に勘案するとしている(法基通9−2−53)。
また、常務に従事する役員については、単に取締役会の構成員として業務執行に関する意思決定に参画するだけの者は該当せず、会計参与や監査役も通常は該当しないとされている(法基通9−2−54)。
期末・期中業務主宰役員の判定時期
さらに、特殊支配同族会社の当該事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度のうちに、特殊支配同族会社に該当しない事業年度がある場合には、最後の非該当事業年度前の各事業年度は基準所得金額の計算上、基準期間に含まれないこと(法基通9−2−56)、基準期間に含まれる各事業年度の中途で業務主宰役員の異動があった場合、期末業務主宰役員または期中業務主宰役員に該当するかどうかは、当該基準期間に含まれる各事業年度の終了の時においてそれぞれ判断することが明記されている(法基通9−2−57)。
なお、法基通9−2−58には、法令72条の2第4項(特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入の特例計算)に規定されている合算対象給与額等を記載するための付表の書式が示されている。
詰め合わせの贈答は飲食等に含まれず
平成18年度税制改正で交際費等の範囲から「飲食その他これに類する行為のために要する費用のうち1人当たり5,000円以下のもの」が除外されている。今回の通達改正では、この「飲食その他これに類する行為」の範囲が明確化されている。
具体的には、「飲食その他これに類する行為」(飲食等)には、得意先、仕入先等社外の者に対する接待、供応の際の飲食のほか、得意先、仕入先等の業務の遂行や行事の開催に際して、得意先、仕入先等の従業員等によって飲食されることが想定される弁当等の差し入れが含まれるとしている。一方、中元、歳暮の贈答のように、単なる飲食物の詰め合わせ等を贈答する行為は、飲食等に含まれないとしている(措通61の4(1)−15の2)。
さらに、「飲食その他これに類する行為のために要する費用として支出する金額」は、その費用の総額をいうとしており、仮に1人当たり9,000円の飲食を行った場合には、別途、得意先等から4,500円を徴したとしても、交際費等の範囲から除外されるものではないとしている(措通61の4(1)−23)。
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(週刊「T&A master」205号(2007.4.2「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2007.5.14 ビジネスメールUP!
984号より
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