会社計算規則等に対応した事業報告や計算書類のひな型が公表
日本経団連、平成18年5月1日以後終了する事業年度から適用可能
日本経済団体連合会は2月9日、「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」をホームページ上で公表した。平成18年5月1日施行の会社法改正に伴うもので、昨年12月22日に公布された改正会社計算規則等も盛り込んだものとなっている。事業報告、計算書類等の10部構成となっている。ひな型については、平成18年5月1日以後に事業年度の末日を迎える場合の事業年度に関する事業報告等から適用することができる。法務省等の関係者との調整を踏まえたひな型であるため、多くの企業にとって利用価値の高いものといえそうだ。
定時総会終結時の退任役員は記載の対象外
各種書類のひな型は会社法施行規則および会社計算規則に対応したもの。各種書類のひな型とともに記載方法の説明も付されたものとなっている。以下、ひな型の留意すべき事項についてみることにする。
事業報告については、会社役員に関する事項がポイントとして挙げられる。まず、事業報告における記載対象となる会社役員は、事業年度の途中で辞めた場合も含まれることになるが、事業報告の対象となる事業年度中に在任していた会社役員であっても、事業年度中に開催された株主総会の終結の時をもって退任した者については、事業報告の記載対象にならないとしている。
資格に限定せず経理部○年間勤務でもOK
監査役または監査委員が財務や会計に関する相当程度の知見を有している場合には、その内容を記載することになる。この「相当程度の知見を有している場合」の範囲については、公認会計士や税理士資格等の法的な資格を有する場合に限定されず、「会社の経理部門において○年間勤務した経験を有する」といった内容でもよいとしている。
ストック・オプションは費用計上した部分
取締役、会計参与、監査役、執行役に対する報酬等については、それぞれ区分したうえで総額を記載することになる。ポイントとしては、使用人兼務役員の使用人部分の給与等が挙げられる。事業報告への記載対象は、役員として受ける報酬等のみであり、従来の営業報告書等とは異なり、使用人兼務役員の使用人部分の給与等を「報酬等」に合算して記載することは認められない。
役員賞与については、他の報酬等と同様、職務執行の対価であるため、報酬等の総額に含めて記載することが求められる。なお、事業報告への記載が求められる役員賞与は、事業年度終了後に現実に支払われた賞与の額ではなく、当該事業年度の業績等を踏まえ、今後支払い予定の額も含めた額となる。
ストック・オプションについては、株主総会の有利発行決議を経たか否かにかかわらず、職務執行の対価としての性格を有していれば、会社法上の報酬等として取り扱われることになる。したがって、ストック・オプションとして与えられた報酬等の総額も事業報告への記載が必要となる。具体的には、会社役員に与えられたストック・オプションの価値のうち、当該事業年度の報酬分に相当するものの記載が求められ、ストック・オプション会計基準を適用すれば、当該事業年度において費用計上されるものが基準となるとしている。
退職慰労金についても報酬等に含めて記載することになる。たとえば、事業報告の提出される株主総会において退職予定の会社役員への退職慰労金は、決議予定の退職慰労金の額を記載することになり、固定報酬や賞与等と合算した額を記載すればよいとされている。また、各事業年度ごとに退職慰労金の引当金を計上している場合で、各事業年度に係る事業報告に当該事業年度分の報酬等の額として、当該引当金等の額を含めて記載しているときは、退職時の株主総会に係る事業報告においては退職慰労金の総額のうちすでに各事業年度で開示が行われている額の記載は不要としている。
社外役員の意見で事業方針が変更した場合
社外役員に関する開示でのポイントは、主な活動状況である。各社外役員ごとに取締役会および監査役会等の出席・発言状況を記載することになるが、出席状況については、取締役会ごとの出席状況までを明らかにする必要はないが、取締役会への社外役員の参加状況が明らかになるように記載する。なお、社外役員の意見で会社の事業の方針等に係る決定が変更された場合には、その内容を記載する必要がある。ただし、企業秘密に該当する事項や社外役員の意見によって変更されたか否かが判然としない場合は記載する必要がない。
会計監査人の過去2年間の業務停止処分も
会計監査人に関する事項に関しては、業務停止処分に関する事項がポイントとなる。会計監査人が過去2年間に業務の停止処分を受けた者である場合には、処分に係る事項のうち、事業報告作成会社が事業報告の内容とすることが適切であるものと判断した事項を記載する。記載対象は、監査業務に対する業務停止に限定されず、非監査業務等も含まれる。
関連当事者取引、開示対象外の取引を例示
計算書類関係では、税効果会計に関する注記や関連当事者との取引に関する注記などがポイントとして挙げられる。税効果会計では、繰延税金資産および繰延税金負債の発生の主な原因を注記する。また、関連当事者との取引に関しては、開示対象から除外される「当該取引に係る条件につき市場価格その他当該取引に係る公正な価格を勘案して一般の取引の条件と同様のものを決定していることが明白」な取引(会社計算規則140条2項3号)について、たとえば、製品の販売等について市場価格を勘案して一般的な取引条件と同様に決定している場合や建物の賃貸等で近隣の地代、取引実勢に基づいて一般的な取引条件と同様の賃料を決定している場合などを例示している。この点、関連当事者の開示に関する会計基準等とは異なるので留意したい点だ。
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(週刊「T&A master」199号(2007.2.19「今週のニュース」より転載)
(分類:会社法等 2007.3.26 ビジネスメールUP!
966号より
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