完全親子会社の組織再編における無対価の会計処理を明確化
ASBJ、改正企業結合会計基準等適用指針を正式決定
企業会計基準委員会(ASBJ)は12月1日、改正企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」を決定した。実務上の取扱いについて問い合わせの多かった共通支配下の取引等に関する会計処理などを中心として、株式交換または株式移転に関する会計処理、自己株式に関する会計処理について見直しが行われている。
今回の適用指針の見直しに伴い会社計算規則も改正されることになり、完全親子会社関係にある組織再編において対価が支払われなかった場合の会計処理等については、会社計算規則が適用される組織再編以後に契約が締結される合併等から適用されることになる。
無対価の会計処理を明確化
共通支配下の取引等に関する会計処理では、@子会社と孫会社の合併の会計処理(子会社が吸収合併存続会社となる場合)、A子会社と他の子会社の合併の会計処理(抱合わせ株式の会計処理)、B完全親子会社関係にある組織再編において対価が支払われない場合の会計処理が定められている。
公開草案を受けた見直しでは、Bに関する規定を明確化するため、新たに項目を設けることとなった。具体的には、合併の場合(子会社と他の子会社との合併の場合)、吸収合併存続会社の増加資本については、合併が共同支配企業の形成と判定された場合の吸収合併存続会社の会計処理に準じて処理することになる。
また、会社分割の場合は、親会社の事業を子会社に移転するケース、子会社の事業を他の子会社に移転するケース、子会社の事業を親会社に移転するケースの3つに分けて、会計処理が示されている。
たとえば、親会社の事業を子会社に移転するケースについてみると、吸収分割会社である親会社は、分割型の会社分割における分割会社の処理に準じて、移転事業に係る資産および負債の差額に相当する株主資本の額を変動させることになる。なお、変動させる株主資本の内訳は、取締役会等の会社の意思決定機関において定められた額となる。
また、吸収分割承継会社である子会社は、親会社で変動させた株主資本の額を会社法の規定に基づき計上する。
取得した子会社株式の取得原価は時価
株式交換および株式移転に関する会計処理については、新たに株式交換または株式移転直前に子会社が自己株式を保有している場合等の会計処理が追加されている。
会社法では、株式交換または株式移転に際し、株式交換完全親会社等は株式交換完全子会社等が保有する自己株式に株式交換等の対価を割り当てる必要があるため、株式交換等の対価として株式交換完全親会社等の株式が割り当てられた場合の結合当事企業の会計処理を定めている。
具体的には、@株式交換完全親会社等の会計処理では、親会社が取得した子会社株式の取得原価は、時価により算定する、A株式交換完全子会社等の会計処理では、自己株式と引換えに取得した親会社株式の取得原価は、親会社が付した子会社株式の取得原価を基礎として算定することになる。
自己株式の会計処理も追加
自己株式に関する会計処理については、持分の結合と判定された場合で自己株式を対価とした場合の処理が追加されている。
具体的には、合併の対価に吸収合併存続会社の自己株式が含まれる場合、吸収合併消滅会社の合併期日の前日の株主資本構成
をそのまま引き継ぎ、処分した自己株式の帳簿価額をその他資本剰余金から控除することになる。
税務上ののれん全額を一時差異
その他、公開草案から追加される項目としては、たとえば、非適格合併等における税務上ののれんの税効果の取扱いがある。
具体的には、税務上ののれん(資産調整勘定または差額負債調整勘定)が認識される場合には、当該税務上ののれん全額を一時差異とみて、繰延税金資産または繰延税金負債を計上したうえで、配分残余としての会計上ののれんを計上することになる。
連結財務諸表原則との関係を明確化
また、公開草案に寄せられたコメントを受け、企業結合会計基準と連結財務諸表原則の関係を明確化する規定も置いている。
企業結合会計基準については、合併、株式交換・株式移転、会社分割、営業譲渡・譲受等に対して適用され(企業結合会計意見書二)、連結財務諸表原則は、現金を対価とした子会社株式の取得に対して適用される(企業結合会計意見書三5等)。適用される組織再編の形式は異なるものの、企業の株式のすべてを現金で取得した場合と現金を対価とした株式交換を行った場合の経済的実態は同じであると考えられる。
このため、連結財務諸表原則を適用すべき企業結合であっても、企業結合会計基準の規定を適用して会計処理をすることが適当と考えられる場合には、同基準に基づく一定の開示を義務付けている。
会社計算規則の公布は12月20日以降に
適用時期については、@完全親子会社関係にある組織再編において対価が支払われなかった場合の会計処理、A子会社と孫会社との合併、B子会社と孫会社との分割型の会社分割、C子会社と子会社との合併における抱合せ株式の会計処理については、会社計算規則が適用(平成19年1月施行予定)される組織再編以後に契約が締結される合併または会社分割(新設分割にあっては分割計画)から適用される。
このほかについては、平成18年4月1日以後開始する事業年度から適用されることになる。
なお、会社計算規則については、現在のところ、12月20日以降の公布が予定されている。
※
記事の無断転用や無断使用はお断りいたします
⇒著作権等について
T&Amaster 読者限定サイト 検索結果(注:閲覧には読者IDとパスワードが必要になります)⇒ID・パスの取得方法
キーワード 「組織再編」+「会計処理」⇒35件
(週刊「T&A master」190号(2006.12.11「今週のニュース」より転載)
(分類:会計 2007.1.17 ビジネスメールUP!
939号より
)
|