役員給与 期首に遡及し増額改定分を一括支給する法人相次ぐ
当局は「現行通達は既に効力なし」との見解
定時株主総会で役員給与の増額決議を行った場合、これを期首に遡って適用し、増額分を総会後に一括支給するのが従来の慣行だったが、18年度税制改正により、一括支給を受けた役員の役員給与は定期同額給与に該当しないこととされたのは周知のとおりだ。
しかし、それにもかかわらず、18年度税制改正以後に差額分を一括支給した法人が相次いだ模様だ。これらの法人がよりどころとするのが、課税上、一括支給を容認する法人税基本通達9−2−9の2。確かに同通達は現状では存続しているが、当局は、改正法人税法が施行され、国税庁より役員給与に関するQ&Aも公表されているなか、「同通達は既に効力なし」との見解を示している。
Q&Aの公表が一括支給に間に合わず
従来、法人税の課税実務では、たとえば3月決算法人が5月の定時株主総会で役員給与の増額決議を行い、期首(4月)に遡って役員給与の増額を適用し、既に支払った役員給与月額との差額を6月に一括支給した場合、当該差額給与の損金算入を認めてきた(法人税基本通9−2−9の2)。
一方、改正法人税法の規定を読むと、「定期同額給与」とは、「その支給時期が一月以下の一定の期間ごとであり、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与その他これに準ずるものとして政令で定める給与」とされており(法法34条1項1号)、一括支給により「各支給時期における支給額が同額」でなくなった役員給与はもはや定期同額給与には該当しないものと解釈される。
それにもかかわらず、18年度税制改正以後も差額分を一括支給した法人が相次いだ背景には、現状、改正通達は公表されておらず、法人税基本通達9−2−9の2も形式上は存続していることがある。
課税当局は、法人税法が改正された以上、改正前の法律を前提とした法人税基本通達の規定も事実上廃止されているに等しいとの見解を示しているが、改正法人税法に基づく役員給与に関する取扱いを解説したQ&Aが国税庁から公表されたのが6月末。このQ&Aのなかでは、「既に終了した職務に対して、“事後”に給与の額を増額して支給したものは、損金の額に算入されない」旨が明記されており、現行通達の内容を完全に覆した形となっているが、3月決算法人など、6月に一括支給を行った法人にとっては、まさにギリギリのタイミングでの公表だったといえる。
「改正税法に関する勉強不足」といってしまえばそれまでだが、一方で、そこまで一般納税者に求めるのは酷との見方もできる。今回の事態がどのように収束するのか注目される。
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キーワード 「一括支給」⇒7件
(週刊「T&A master」189号(2006.12.4「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2006.12.27 ビジネスメールUP!
935号より
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