三角合併では外国人株主への課税が大きな焦点に
非居住者等による海外流通株式取得で課税機会確保は困難?
来年度税制改正で課税繰延措置導入の可能性が高まっている“三角合併”では、外国人株主への課税問題が生じることになりそうだ。その背景には、近年、日本の大手企業を中心に、外国人持株比率が急速に高まっていることがある。
「三角合併」解禁にらみ加速する日本企業同士のTOB
王子製紙による北越製紙へのTOBをはじめ、日本企業同士のTOBが加速しつつある。TOBが相次いでいる背景には、日本企業同士の統合により企業規模を拡大し、来年度実現する見込みの三角合併を免れようという意図があるともいわれる。
三角合併とは、外国企業が日本現地法人(合併法人)と日本企業(被合併法人)を合併させることによって、日本企業を傘下に収める手法のことをいう。ただ、三角合併では、被合併法人(日本企業)の株主に対して外国企業の株式が交付されることになり、「被合併法人に対して移転資産等の対価として合併法人の株式以外の資産が交付されていないこと」との要件に抵触するのをはじめいくつかの税制適格要件を満たさないことから、現行法人税法上は非適格合併とされる(本誌174号参照)。
これらの点については今後議論の対象になるものと思われるが、三角合併に関する課税繰延措置が導入されるためには、「外国人株主への課税」というより深刻な問題をクリアすることが前提となりそうだ。
租税回避の温床になる可能性も
三角合併が行われると、日本企業(被合併法人)の株主は、これまで保有していた当該日本企業の株式と引換えに、外国企業の株式、すなわち、日本で流通していない(海外で取引されている)株式を手にすることになる。
そうなると問題になるのが、当該日本企業の株主が外国法人や非居住者である場合だ。近年、日本企業における外国人持株比率は極めて高くなっている。たとえばソニーでは、外国人持株比率が50.1%(2006年3月末時点)にも及んでいる。
そして、外国人株主に対して外国企業の株式が交付された場合には、海外で流通する株式を非居住者等が取得することになる。この場合、将来株式の売却が行われても、課税機会の確保は困難といわざるをえないだろう。一方で、日本人株主が当該外国株式を売却した場合に譲渡益課税が行われるとすれば、外国人株主の地位を利用する等による租税回避の温床になるという懸念も出てくる。
課税機会を確保するため、三角合併の段階で課税をすることも考えられるが、その場合、何を課税対象額とするかなどが問題となろう。
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キーワード 「外国企業」⇒28件
(週刊「T&A master」175号(2006.8.14「今週のニュース」より転載)
(分類:税制改正 2006.9.20 ビジネスメールUP!
895号より
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