注目される「中小法人の範囲」への影響
法人税法上の「資本の部」の概念整理で
今般の法人税法改正で、「資本等の金額」が「資本金等の額」とされるなど、法人税法上の「資本の部」の概念整理が行われたことを契機に、今後は中小法人の範囲の判定の見直しが検討課題となる可能性もありそうだ。
会社法では、資本と準備金、剰余金の区分があいまいになり、資本金をいくらにでも設定できるようになったため、理論上は、大手企業が資本金を「1億円以下」として法人税法上の中小法人になることも可能になってしまうからだ。
資本金等の額>資本金の額
18年度法人税法改正では、「資本等の金額」が「資本金等の額」に変更されている。
改正前の「資本等の金額」は、「資本の金額(又は出資金額)」と「資本積立金額」の合計額とされていたが、改正により「資本積立金額」という概念が消滅し、資本積立金額に相当する金額も「資本金等の額」に組み込まれた。
すなわち、資本金等の額とは「資本金+旧資本積立金」であることから、「資本金等の額」は、旧資本積立金額の分、資本金を上回ることになる。
より実質的な基準で判断なら大きな影響
法人税法では、「資本金の額又は出資金額が1億円以下であるもの」を中小法人とし(法法66条A、措法61条の4@等)、様々な特例措置を設けているが、この中小法人の範囲は18年度税制改正では見直されなかった。しかし、会社法で、これまでの利益及び準備金の資本組入れ、剰余金の準備金組み入れの制限が撤廃され(会社法451条@)、また、資本を準備金とすることも認められるなど(会社法447条@ニ)、資本と準備金、剰余金の区分があいまいになり、資本金をいくらにでも設定できるようになったことに伴って、理論上は、大手企業が資本金を「1億円以下」とし法人税法上の中小法人になることも可能になった。こうしたことを防ぐには、これまで通りに「資本金」によって中小法人の判定を行うのでは無理があろう。
中小法人には、法人税率の軽減をはじめ、税額控除・特別償却、交際費課税、留保金課税に対する軽減措置など多くの特例措置があり、この特例措置を受けるために「資本金の額(又は出資金額)」を1億円以下に抑えたり、あるいは、「資本の金額」の1000分の7とされる会社の設立登記に係る登録免許税を抑えるために、会社設立時の資本の金額を低く抑え、資本準備金に振り分けている会社も少なくない。このため、仮に、中小法人に該当するかどうかが、例えば「資本金等の額」など、より実質的な基準により判定されることとなった場合には、大きな影響が出ることになろう。
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(週刊「T&Amaster」159号(2006.4.17「最重要ニュース」より転載)
(分類:税務 2006.5.22 ビジネスメールUP!
848号より
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