18年度改正で、「資本積立金額」の概念が消滅
法人税法上の資本の部は「資本金等の額」と「利益積立金額」のみに
今般の法人税法改正によって、法人税法から「資本積立金額」という概念がなくなることになった。
今後、法人税法上の資本の部関係の項目は、「資本金等の額」と「利益積立金額」に集約される。
新会社法では、資本と準備金、剰余金の区分があいまいになった(資本の部の計数の変動手続が定められた)が、法人税法は、「払い込まれたもの」と「会社が稼いだもの」が明確に区分され、会社法とのスタンスの違いが鮮明になったと言える。
政令にも「資本積立金額」は登場せず
新会社法で、商法上の「資本」が「資本金の額」とされたことを受け、法人税法でも所要の整備が行われている。具体的には、現行法人税法上、「資本等の金額」は、「資本の金額(又は出資金額)」と「資本積立金額」の合計額とされているところ(法法2条16号)、18年度改正法人税法案では、「資本等の金額」を「資本金等の額」に変更した上で、「資本の金額又は出資金額と資本積立金額との合計額」とのくだりを削除している。さらに、現行法人税法では、同条17号で資本積立金額の定義を定めているが、改正法人税法案ではこれが削除されている。
これにより、法人税法上、「資本積立金額」という概念自体が消失し、「株式の発行価額のうち資本に組み入れなかった金額」等現行の資本積立金額とされているもの(法法2条17号イ〜ワ)は、「資本金の額」とともに、「資本金等の額」として、政令に規定されることになる。
これにより、法人税法上の資本の部は、今後、「資本金等の額」と「利益積立金額」に集約されることになる。
資本金等の額は税法固有の概念に
この改正が持つインパクトの一つは、法人税法と会社法との立場の違いがより鮮明になったことだろう。
新会社法では、これまでの利益及び準備金の資本組入れに加え、剰余金の準備金組入れの制限が撤廃され(会社法451条1項)、また、資本を準備金とすることも認められるなど(会社法447条1項2号)、資本と準備金、剰余金の区分があいまいになった。これに対して、法人税法は、「資本の払戻し」と「剰余金の分配」では課税上の取扱いが異なるため、「払い込まれたもの」と「会社が稼いだもの」を明確に区分した形となっている。すなわち、従来の「資本等の金額」は商法上の概念である「資本」と、税法固有の概念である「資本積立金額」の複合であったが、18年度税制改正後の「資本金等の額」は、税法上の固有概念として位置づけられることになる。
なお、本改正に伴い、別表五(一)の明細書様式が見直されることになる。
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(週刊「T&Amaster」155号(2006.3.20「最重要ニュース」より転載)
(分類:税務 2006.4.3 ビジネスメールUP!
830号より
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