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最高裁、「登録免許税の過誤納金還付拒否通知は行政処分」と判示
1年の期間制限に排他性は認めず・過誤納金の還付請求も可

 

 最高裁判所第一小法廷(横尾和子裁判長)は、4月14日、登録免許税法31条2項に基づく過誤納金還付通知請求に対する「通知をすることはできない旨の通知(以下「拒否通知」)」は、取消訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当と判示したものの、「訴えの利益がない」として、法務局登記官の上告を棄却した(平成13年(行ヒ)第25号)。

事案の概要
 本件は、原告(被控訴人・附帯控訴人・被上告人)が、阪神・淡路大震災により損壊したため取り壊した建物に代わるものとして新築した建物について所有権保存登記の申請をした際、阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(以下「特例法」)37条1項が適用されないと誤信して登録免許税を納付したため、その後原告が登録免許税法31条2項に基づく還付通知請求をしたのに、所轄する法務局の登記官(以下「登記官」)は、還付通知をしない旨の通知をしたが、登録免許税の納付は誤納付であると主張して、被告国に対して登録免許税相当額の不当利得の返還を、被告登記官に対して拒否通知の取消しを求めていた事案である。

下級審の判断
 第1審(神戸地裁)は、原告の国に対する不当利得返還請求を容認し、登記官に対する訴えを却下した。神戸地裁は、「特例法37条1項は、どのような手続的課税要件を大蔵省令に委任しているのか明らかでなく、いわば白紙的に委任しているものというほかはないから、右委任は租税法律主義に反して無効であり、したがって、特例法施行規則20条1項の定める登記申請書への被災証明書の添付をもって課税(免税)要件とすることはできない。」と判示した。
 控訴審(大阪高裁)は、「被控訴人は、本件登記申請に際して、特例法施行規則20条1項所定の書類添付をしなかったことが認められ、したがって、本件納付が法律上の原因を欠く過誤納金であるとは認められない。」として、国への不当利得返還請求を容認した第1審の判決を取消して、被控訴人(原告)の請求を棄却した。さらに、「拒否通知は、取消訴訟の対象となる行政処分に当たる。」と主張する登記官の控訴は棄却された。大阪高裁は、「特例法施行規則20条1項により添付すべき証明書類は、(中略)、右規則の定めはまさに法律の委任の範囲に属する合理性のある規定であり、有効であると解される。」などと判示して、違憲無効の第1審の判断を斥けた。

最高裁での争点
 原告(被控訴人)は、控訴審判決を受け、上告を断念した。すなわち、過誤納金の還付を受けられないことが確定した。被告(国・登記官)は金銭面で勝訴したが、登記官は、「拒否通知の行政処分性」を争点にして上告した。登記官は一貫して「拒否通知は、取消訴訟の対象となる行政処分に当たる。」と主張してきたが、第一審は、「登録免許税はその税額が公定力をもって確定されるわけではないので、還付通知請求に対する還付通知や還付通知をしない旨の通知は、単に還付の事務を円滑ならしめるための登記官の認識の表示にすぎず、過誤納税額の還付請求権者の法律的地位を変動させる法的効果を有するものではないと解されるから、これをもって行政処分ということはできない。」と判示して、原告の請求を却下していた。登記実務は、拒否通知には、国税不服審判所長に審査請求することができるとされていることからも明らかなように、行政処分性を有することを前提に運営されており、行政処分性を認めない一審判決を容認した控訴審判決は、看過できるものではなかった。登記官は、上告受理申立理由として次のように主張した。
 「本件は、登録免許税法31条2項に基づく登記機関の行う還付通知しない旨の行政処分性の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件である。」「申立人(登記官)の控訴を棄却した部分を破棄し、この部分にかかる第一審判決を取り消し、相手方の申立人に対する請求を棄却すべきである。」

最高裁の判断
 最高裁は、「登録免許税法31条2項は、手続きの排他性を規定するものということはできない。」と判示しながらも、「拒否通知は、登記等を受けた者に対して上記の手続上の地位を否定する法的効果を有するものとして、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当である。」と判示し、本件訴えを不適法として却下すべきものとした原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があるものといわざるを得ない。」と判示している。
 また、「手続きの排他性を規定するものということはできない。」ということから、「登記等を受けた者は、過大に登録免許税を納付した場合には、同項所定の請求に対する拒否通知の取消し(1年の期間制限)を受けなくても、国税通則法56条に基づき、登録免許税の過誤納金の還付を請求することができるものというべきである。」と判示している。
 しかし、最高裁は、「被上告人(納税者)は、本件訴えにおいて本件拒否通知を取消す旨の判決を得たとしても、これによって還付を受けることができる地位を回復する余地はないから、本件訴えにつき訴えの利益を有するものとすることはできない。」として、結論において登記官の上告を棄却することになった。
 納税者に対して負けないことを確定させた上で、行政実務に資する観点から裁判所の判断を仰ごうとすることは、上告費用が国民全体の負担であることを考慮すればやりきれない面も残る。国(登記官)の主張を明らかにするためだけの上告審であり、上告審として受理する必要性が公益的に認められるべきか否か、検討されるべきであろう。

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週刊「T&A master」112号(2005.4.25「最重要ニュース」より転載)

(分類:税務 2005.5.23 ビジネスメールUP! 708号より )

 

 
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