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名変停止のゴルフ会員権の相続税評価、通達評価の合理性を容認
東京地裁、「念書売買の価格=客観的な交換価値」に疑問を提示

 

東京地裁民事3部(鶴岡稔彦裁判長)は、平成16年12月16日、ゴルフ会員権の相続税評価を争点とした相続税更正処分取消等請求事件において、「ゴルフクラブの規約等に基づいて返還を受けることができる日までの期間に応ずる年8分の利率による複利現価の額による評価」と規定する評価通達の合理性を容認し、ゴルフ会員権価格の低迷や預託金返還が履行されないおそれを背景とした「通達評価への疑問」を訴える相続人の請求を棄却した(平成13年(行ウ)第270号)。

通達評価は「預託金の現在価格」
 相続税評価額が争われた2つのゴルフ会員権は、いずれも預託金制の会員権で、いずれも開場当初から「名義書換停止中」となっていた。
 原告は、本件相続の開始時における本件会員権の価格をいずれも0円として、相続税の申告等を行ったが、被告は、財産評価基本通達関係個別通達(相続税および贈与税におけるゴルフ会員権に関する評価について)に規定する取り扱いに基づいて「ゴルフクラブの規約等に基づいて返還を受けることができる日までの期間に応ずる年8分の利率による複利現価の額による評価」による更正処分等を行った。
 原告は、以下の争点について、本件各会員権の価額を過大に評価した違法があるとして、更正処分等の取消しを請求した。

争点@(通達の合理性)
 原告は、「バブル経済崩壊後、多数のゴルフクラブ経営会社が預託金の返還に窮しており、ゴルフクラブの会員が預託金を回収するのが容易でない事例が多くなっている。」として、預託金返還請求権の現価を時価とする通達評価には合理性がないと主張した。
 東京地裁は、「健全な経営を続け、預託金の返還についても特段の問題が生じていないゴルフクラブも存在することも事実なのであるから、原告主張の事由から本件通達の一般的な合理性を否定するのは相当でなく、むしろ、本件各会員権について、約定通りに預託金の返還を受けられない蓋然性が存するのかどうかを個別的に判断すべきものである。」と、原告の主張を斥けた。

争点A(本件各会員権は「取引相場のないもの」に該当するか)
 原告は、「いわゆる念書売買の実例があり、『参考相場』が示されるものもあったことから、『取引相場のないもの』に該当するとしての通達評価には、通達の解釈適用の誤りがある。」と主張していた。
 東京地裁は、「買主において、ゴルフ場の優先的利用権が完全には行使されないというような問題を含む念書売買の価格をもってゴルフ会員権の客観的な交換価値を示すものと見ること自体に疑問の余地がある。」と指摘し、「本件各会員権について、仮に、取引業者の間に何らかの指標が存在したとしても、それは、当該取引業者の個別的な判断に基づく評価の域を出るものではなく、相続税の計算における相続財産の評価の基礎とするに足りる一般性のある相場が、ゴルフ会員権の取引業者の共通認識として形成されていたとはいい難く、結局のところ、本件各会員権について、本件通達にいう『取引相場』が存在したと認めることはできない。」と、原告の主張を斥けた。

争点B(通達評価の具体的な合理性について)
 原告は、i預託金返還債務が履行されないおそれ、ii通達による本件評価は、本件会員権の相続人が実際に第三者に譲渡した代金額と比較しても高額に失する、ことから、「通達による本件評価は、本件会員権の客観的な交換価値を反映していないというべきであり、(中略)このような事情は、本件通達その他の通達に拠らない評価をすべき特別の事情にも当たる。」と主張した。
 東京地裁は、「本件各会社(ゴルフ場)について倒産手続きが開始されたとか、そのような動きがあるといった事情は全くうかがわれないし、(中略)預託金の返還期限延長に向けた動きが存するとか、預託金返還をめぐる紛争が発生しているとかいった事情については何ら主張立証がされていないのであって、これらの事実に基づく限り、預託金返還請求権が約定どおりに返還されないおそれがあることについて具体的な裏付けがされているとは到底いい難いもの」・「取引相場のないゴルフ会員権の処分価格を適正な時価と評価することに疑問が存する」と判示して、原告の主張を斥けた。

結論・特別な事情は認められない
 東京地裁は、「本件通達評価は、一般に合理性のある本件通達を適正に解釈適用したものであり、かつ、個別事案として本件通達によらないことが正当として是認されるような特別の事情も認められない。」と結論付け、原告の請求を棄却した。 

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週刊「T&A master」108号(2005.3.28「最重要ニュース」より転載)

(分類:税務 2005.4.15 ビジネスメールUP! 696号より )

 

 
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