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最高裁、SO権利行使益は「給与所得」と認定
過少申告加算税は争われず、今後の最高裁での論点残す


 最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は1月25日、海外親会社から付与されたストックオプション(以下、「SO」)権利行使益は、「給与所得」と判断。納税者側の上告を棄却する判決を下した(判決本文は本誌34頁参照)。
 なお、この事件は、本税以外の課税処分については争いがなく、過少申告加算税や、延滞税の取扱いについては、今後の最高裁における判断に論点を残したかたちとなる。

地裁では「一時」、高裁では「給与」
 東京地裁民事2部は平成15年8月、東京地裁民事3部の「一時所得」判決に引き続くかたちで、当局の課税処分を取り消す納税者勝訴判決を下した。これが、今回、最高裁で判決が下された事件である。行政側に厳しい「藤山判決」の次の判決だっただけに、この判決を注目していた実務家は多かった。市村裁判長は、SO権利行使益は、使用者の指揮命令に服して提供した業務の対価とはいえないなどと判示。給与所得の要件を厳格に捉え、「一時所得に該当する」と判断した。しかし、東京高裁民事8部は、平成16年2月、「商法上のストックオプションの権利行使益と異なって取扱う事情は認められない」などとして、SO権利行使益は、「給与所得に該当する」とする納税者逆転敗訴判決を下していた。

最高裁、租税法律主義には触れず
 藤田裁判長は、米国アプライド社が日本アプライド社の発行済み株式の100%を有する親会社であることなどを理由に、「実権を握ってこれを支配している」と判示。SO制度に対しても、「精勤の動機付けとすることなどを企図して設けられているもの」として、所得税法28条1項所定の給与所得に当たると判断した。なお、判決文には、租税法律主義や信義則違反に係る納税者の主張に対しては、一切触れられていない。
 上告人であった八幡恵介氏は、判決後、「何の根拠もなく、課税上の取扱いが変更されたことに憤りを感じる。」とした上で、後に続く同種の上告事件が、第三小法廷に集められていることについて、「何らかの窓意性が感じられる」と話した。また、上告人の代理人弁護士である鳥飼重和氏は、「今回の判決が下級審へ与える影響は大きい。今後は、最高裁第一、第二小法廷や、大法廷での審理への道を模索したい。また、過少申告加算税に関する争いは残っている。」と話した。

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  キーワード 「租税法律主義」
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週刊「T&A master」100号(2005.1.31「最重要ニュース」より転載)

(分類:税務 2005.2.7 ビジネスメールUP! 669号より )

 

 
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