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東京高裁、アメリカ大使館職員に逆転敗訴判決
6割程度の慣行が存在したこと自体疑わしい

 

 東京高裁第17民事部(秋山壽延裁判長)は、11月10日、在日米国大使館の日本人職員に支給された給与について、その一部だけが申告されたことに対し、国税通則法第70条5項(偽りその他不正の行為)が適用され、7年分の追徴課税処分が行われたため、『偽りその他不正の行為』の適用を主な争点として争われていた事件で、職員逆転敗訴判決を言渡した(平成16年(行コ)第188号)。

事件の概要・アメリカ大使館事件
 在日外国公館の日本人職員に支給される給与については、源泉徴収義務がなく、確定申告を行うことになっている。昭和30年頃に行われた米国大使館と国税当局の折衝で、米国大使館からの給与には、社会保険料等がないため、一般的には全体の給与のうち、40%がフリンジベネフィットに対応する部分とする了解があったとされている。日本人職員の間では、当該フリンジベネフィット部分については、非課税であり、確定申告の対象とならないという内部的な言い伝えがあり、被控訴人は、平成4年分から平成7年分の各所得税の申告に際し、給与の一部(申告割合56.5%〜64.0%)について、確定申告を行っていた(本誌【064】(2004.4.26)8頁、【066】(2004.5.17)30頁参照)。

 課税当局は、国税通則法第70条5項に規定する「偽りその他不正の行為」により、7年分の追徴課税を行った。被控訴人は、確定申告の計算自体については、当該非課税部分について誤りを認めているものの、「偽りその他不正の行為」が行われたとして、「過少申告の場合の3年分を超える7年分の追徴課税が行われたこと」の取消等を請求していた。
 原審(東京地裁)は、「原告は、(過少)申告の慣行を信じこれに従って申告したものと認め、『偽りその他不正の行為』を行ったものと認めることはできない」として、国税通則法第70条5項(偽りその他不正の行為)を適用した更正処分等を取消していた。

「過少申告行為は何ら正当な根拠に基づくものではない」
 秋山裁判長は、米国大使館関係者の陳述等から、「(年棒の6割という)本件慣行の内容自体不明確で申告の客観的基準たり得ないのみならず、(略)、結局本件慣行が存在したこと自体極めて疑わしいといわざるを得ない。」と判示し、「被控訴人の過少申告行為は、何ら正当な根拠に基づくものではなく、(略)納付すべき税額を過少にして、本来納付すべき税額との差額を免れる意図を有していたと推認するに難くない。『偽りその他不正の行為』に該当するものというほかはない。」として、米国大使館日本人職員に逆転敗訴判決(請求棄却)を言渡した。

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 キーワード 「大使館」
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週刊「T&A master」091号(2004.11.22)「最重要ニュース」より転載)

 

(分類:税務 2004.12.27 ビジネスメールUP! 657号より )

 

 
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