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最高裁、消費税の選択不適用手続きのミスに税賠保険の適用を判示
税制選択上の過誤は特約の適用外

 

 最高裁判所第二小法廷は、平成15年7月18日、「税理士が消費税の簡易課税制度選択不適用届出書の提出を怠ったために生じた損害賠償に対して、税理士職業賠償責任保険適用約款の税理士特約条項第5条2項(本来納付すべき税額の免責条項)の適用はないと解すべきである。」と判示し、免責条項が適用されるとした原審(東京高裁平成11年(ネ)第6061号)の判断を否認し、東京高裁に審理を差し戻した。(最高裁 平成12年(受)第1394号 保険金請求事件)

簡易課税選択不適用届出書の提出を怠り、増額更正処分を受ける
 事案の内容は次のとおりである。
 税理士は、訴外会社の消費税の申告について、消費税法に定める簡易課税制度選択不適用届出書を怠ったまま、一般の課税方式により消費税額を算定し、申告手続きを行った。 

 一般の課税方式により算定された(申告された)消費税額が、簡易課税が適用されるものとして計算された税額よりも低額であったため、申告を受けた税務署長は、訴外会社に対し、簡易課税を適用して計算された額とする旨の増額更正を行った。

 訴外会社より、増額更正により増額された消費税額相当額等の損害賠償を請求された税理士が保険会社に税理士損害賠償責任保険に基づく保険金の支払を求め、訴訟を提起した。

税制選択上の過誤は、形式的に過少申告であっても特約を適用せず
 税理士職業賠償責任保険適用約款の税理士特約条項第5条2項は、「修正申告、更正または決定により納付すべきこととなる本税等の本来納付すべき税額の全部もしくは一部に相当する金額については、これをてん補しない。」としており、本件事案においても、この特約条項が適用されるとして、東京高裁は、保険金の請求を認めてこなかった。

 最高裁は、「本件のように、税理士の賠償すべき損害が不適用届出書の提出を怠ったという税理士の税制選択上の過誤により生じたものであるときには、依頼者に有利な一般の課税方式が適用されないことにより、形式的にみて過少申告であったとしても、本来納付すべき税額を賠償し、その損害を税賠保険によりてん補されることで生ずる納税申告の不正助長を防止しようとする特約条項の適用はないと解すべきである。このように解しても、特約条項の趣旨、目的に反するものではない。」と判示し、東京高裁に差し戻した。

 税理士の過少申告のミスは、税賠保険適用外とされてきただけに、税理士界に大きな波紋が予想される。



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週刊「T&A master」029号(2003.7.28)「最重要ニュース」より転載)

(分類:税務 2003.10.6 ビジネスメールUP! 484号より )

 

 
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