再評価差額金取崩額と減損損失は相殺しない方向へ
ASB・土地再評価法の再評価差額金の取扱いは?
企業会計基準委員会(ASB)の減損会計専門委員会では、固定資産の減損会計に係る適用指針の作成に着手しているが、土地再評価法による再評価差額金については、減損損失と相殺しない方向で検討が進められている。
企業側は減損損失と再評価差額金との相殺を求める
今年の8月9日に企業会計審議会から「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」が公表されているが、土地再評価法により再評価を行った土地については、再評価後の帳簿価額に基づいて減損会計を適用することとされ、減損処理を行った場合の土地再評価差額金の取扱い等については、企業会計基準委員会において検討することが適切であるとされている。このため、企業会計基準委員会では、適用指針を作成する上での論点の一つとして、土地再評価法における再評価差額金の取扱いを挙げている。
土地再評価法では、すべての事業用の土地を再評価し、時価が帳簿価額よりも上回れば、その評価差額については税効果会計を適用し、繰延税金負債を控除した後に「再評価差額金」として資本の部に計上する。再評価差額金については、その土地を売却するか、もしくは商法第34条第2号の規定による減額した場合などには取り崩すこととされているが、減損会計を適用した場合に減損損失と相殺できるかどうかが問題となる。
不動産業界を中心として、企業側では、再評価差額金を計上した土地については、その土地の再評価差額金を取り崩して減損損失と相殺することを強く求めている。土地再評価法については、すでに平成13年3月31日平成14年3月31日で期限切れとなっているが、平成12年3月期の時点において217社が適用しており、その後の2年間でも相当数の企業が同法を適用しているだけにその影響は大きいものといえる。
改正土地再評価法Q&Aでは再評価差額金を未処分利益に繰入れる処理と明記
この点について、企業会計基準委員会の事務局側では、減損損失額の算定に当たり、
@再評価差額金の取崩額を未処分利益の増減と考えて再評価差額金取崩と減損損失を相殺しない考え方、
A再評価差額金の取崩額を特別損益と考えて再評価差額金取崩と減損損失を相殺する考え方
―の2つの案が提示している。
日本公認会計士協会が公表している「改正土地再評価法に関するQ&A」では、再評価差額金を取り崩した場合について、「土地の売却損益を修正するためのものではなく、剰余金計算を通して再評価差額金を未処分利益に繰入れるための処理」と明記している(Q2)。また、再評価差額金は自己株式の消却に用いることができるため(Q9)、再評価による土地の簿価の増加額と再評価差額金の間には必ずしも対応関係が存在しないとしている。
このため、現時点での減損会計専門委員会の大方の意見としては、前記@の考え方を採用する方向となっている。したがって、企業側が要望する再評価差額金取崩と減損損失の相殺はできないことになり、企業が減損会計を適用する際の影響額も大きいものとなりそうだ。
※
記事の無断転用や無断使用はお断りいたします
⇒著作権等について
(週刊「T&A master」プレ創刊1号「最重要ニュース」より転載)
(分類:会計 2003.1.15 ビジネスメールUP!
380号より
)
|