第34回
“米ビール”で乾杯する日
ビールと発泡酒。見た目も似ているし、味も大差がない。にもかかわらず、どうして呼び方が違うんだ?――と首をかしげる向きもあろう。
実は、これには「税」が影響している。酒税法上の「ビール」とは、原則として「麦芽、ホップ、水」でできたものを指す(酒税法3条七イ)。このほか、とうもろこしや米などを原料として混ぜることも可能だが、これらの原料は麦芽の5/10を超えてはならないことになっている(同ロ、酒税法施行令6条)。要するに、ビールとは「麦芽」で作るのが基本であり、あまり“混ざり物”が多いと、ビールとは呼ばないということだ。そして、この“混ざり物”が5/10を超えるものが「発泡酒」なのである。
では、なぜビール会社は最近やたらと「発泡酒」の製造・販売に力を入れているのか?理由は簡単、発泡酒の方が酒税が安いからである。酒税が安ければ、それだけ販売価格を安くすることができる。発泡酒が安いのは別に「味が薄い(?)」からではない。実は税が最大の原因だったというわけだ。
もっとも、同じ発泡酒でも、「麦芽」の割合によって酒税額は3段階に分かれる。具体的には、麦芽50%以上なら「約78円」、50%未満25%以上なら「約53円」、25%以下なら「約37円」となる(いずれも発泡酒350ml当たり)。このうち、麦芽50%以上の「約78円」というのは、ビールと同じ酒税額である。これは、「麦芽が50%以上入っていれば、ビールとほとんど味が変わらない」という判断からだ。では、現在売られている発泡酒の麦芽割合はというと、ほとんどの発泡酒が酒税の最も安い「25%以下」となっている。つまり発泡酒は、ビールを基準にすれば麦芽は半分以下、あとは米やとうもろこしでできているということになる。
ところで、現在政府は、14年度税制で発泡酒に関する酒税の増税を検討している。これは、ビール会社が酒税の安い発泡酒に力を入れるようになったことで、税収が減ることを懸念したものだ。もちろんビール会社側はこれに猛反対の姿勢を見せており、実現するかどうかは不透明。しかし、もし実現することがあれば、発泡酒の値段は上がるだろうし、増税幅次第では発泡酒を作ること自体やめてしまう可能性もある。もしかしたら、「米ととうもろこしのビール」などというものが登場するかもしれない。
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(2001.11.9 ビジネスメールUP!
222号より
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