第25回
"二つ"のNPO法人
「ハーバード」といえば、誰もが知っているアメリカの有名大学だが、実はこのハーバードをはじめ、アメリカの多くの大学が「NPO法人(特定非営利活動法人)」であることは意外と知られていない。さらに、NPO先進国アメリカでは、大学のみならず、博物館や美術館、病院などもNPO法人であるケースが多い。
一方、日本はというと、いわゆるNPO法が平成10年12月1日に施行されて以来、既に4,643件のNPO法人が設立されている(13年8月17日現在)。さらにNPO法人は毎週50程度のペースで増加し続けており、我が国にもNPO時代が到来したかのようにも見える。
しかし、まだそう言い切るのは早計。我が国にNPOが真に根付くかどうかの鍵を握っているのが「NPO税制」だ。NPO税制とは、NPO法人の活動を支援するために、国税庁長官の認定を受けた「認定NPO法人」に対し個人や法人が支出した寄附金について、寄附金控除や損金算入など、課税上のメリットを与えるもの。来月10月1日からのNPO税制施行を前に、去る9月3日より全国各国税局で、認定申請に関する事前相談が実施されているが(#194参照)、実際のところどれだけのNPO法人が「認定NPO法人」となることができるかについては、懐疑的にならざるを得ない。
というのも、認定NPO法人となるためには、「総収入金額のうちに占める寄附金及び助成金の額(寄附金総額)の割合が1/3以上であること」という要件を満たさなければならないが、関係者によれば、この要件を満たせるNPO法人はほどんどないと言われているからだ。実際、13年4月にまとめられた国民生活審議会・総合企画部会の最終報告によれば、NPO法人を含む市民活動団体の収入源のうち、「寄附金」収入はわずか4.7%に過ぎず、「1/3」には程遠い状況。調査対象となった市民活動団体の大部分が任意団体であるため必ずしもNPO法人の実態を正確に表しているとは言えないが、今後このような任意団体がNPO法人に転換していく可能性を考えれば、無視できないデータと言える。
米国のNPO税制でもこの「1/3以上」という数字自体は同じだが、米国では分母の総収入金額から「事業収入」が控除されるなど、その計算プロセスはだいぶ異なっており、日本の方がより厳しいものとなっている。
"単なるNPO法人"と"認定NPO法人"―――。同じく特定非営利活動を行う法人でも、当面の間、我が国にはこの二種類のNPO法人が併存することになりそうだ。
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(2001.9.7 ビジネスメールUP!
197号より
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