第2回
贈与税
森総理の“功罪”
森総理がとうとう辞意を表明した。異常なまでの支持率の低さから、かねてから政権の行方が危ぶまれていた森総理だが、その息の根をとめたのは、例のゴルフ会員権問題であろう。実はこのゴルフ会員権問題は、税の観点からも重大な問題を提起している。
このゴルフ会員権、どう考えても「タダでもらった」としか見えない。となると、税金のことを少しでも知っている人ならすぐに「贈与税がかかるのでは?」と考えるはず。しかし、当然(?)のごとく、森総理は贈与税を払ってはいない。こうした中、森総理の口から出た言い訳が「私は名義を借りていただけ」というものだ。
確かにこのゴルフ会員権は政治家の資産公開帳簿にも載っていなかったから、森総理の言う通 り「借りただけ」なのかも知れない。しかし、もし「名義を借りただけなら贈与税はかからない」と言うなら、おそらく誰一人贈与税を払うものはいなくなるに違いない。税務署に何を聞かれても、「これは借りてるだけですから」と言っておけば通
るなら、まさに究極の“節税策”となるからだ。もちろん、そんなことが認められるはずもないので、この「借りてました」作戦はあっという間に葬りさられることとなった。
そこで次に浮上してきたのが、「時効」作戦だ。税金は、申告期限から7年経っていれば「時効」が成立し、払う必要がなくなる。仮に森総理がゴルフ会員権の贈与を受けていたとしても、それは10年以上前の話。つまり、既に時効が成立しており、贈与税を払う必要はないだろうという主張である。しかし、この主張を認めたとすると、このゴルフ会員権は現在「森総理のもの」ということになる。すると、今度は「なぜ資産公開帳簿に載っけなかったんだ」と突っ込まれることになるだろう。
では、森総理が匙を投げて「返却しますから許してください」と謝ったらどうか?残念ならが、それでも事は終わらない。既にゴルフ会員権は「森総理のもの」だから、森総理にとっては「返却」でも、税法上は、新たな「贈与」に他ならず、当然贈与税の課税対象になる。
いい訳をすればするほど“ドツボ”にはまっていく森総理。「至上最悪の総理」との呼び声も高いが、不況の折、これほど国民に笑いを提供してくれた総理も“史上初”に違いない。
バックナンバー
(2001.3.12 ビジネスメールUP!
128号より
)
|