第13回
『税理士の未来像』
国士舘大学教授 川田 剛
はじめに
先般、税理士法改正法案が成立し、税理士法人等が可能となった。
今回の改正は昭和55年の改正以来実に21年ぶりのものであり、新しい時代に対応する制度として、十分な機能を果たしていくことが期待されている。
この間における関係者の皆さんの多大な御苦労、御貢献にこの場を借りて厚く御礼申し上げたい。
ところで、この欄は、提言ということなので、将来における方向等について私見を述べてみたい。
税理士の損害賠償の上限設定
納税者の権利意識の高まりにより、税理士に対する損害賠償請求は、今後さらに増加していくものと思われる。その結果、多額の損害賠償により税理士を廃業しなければならなくなる可能性もある。
そこで、損害賠償請求金額に上限を設定するということを検討すべきである。
例えば、年間報酬の10倍以内とか相続案件であれば受託金額の10倍以内というような形で上限を設定するのである。
低額の報酬しか得ていないにも拘らず多額の損害賠償に苦しむという姿は、どうみても不自然である。
訴訟代理
今回の改正では、税理士が弁護士と一緒に出廷して陳述するという出廷陳述権が認められることとなった。これはこれで大きな前進である。
そして、訴訟代理については将来の検討課題とされた。
したがって、理想論ということでいえばやはり訴訟代理までは実現したかったというのが税理士界としてもいつわらざるところではなかったのだろうか。
他方、弁理士や司法書士については今回限られた分野についてではあるが、訴訟代理が認められることとなった。
もちろん、税理士が訴訟代理人として活動するためには民事訴訟法等の研修が不可欠であろう。しかし、税理士の中には国税税務官や国税審判官など、それなりの経験をした人達がおり、少なくともその人達については十分その役割を果たすことができるものと考えられる。
税理士会の会員の一部に対してのみこの種の権利を付与するという点については、異論もあろうが長い目でみれば業界にプラスであると思われるためあえて提言を試みた次第である。
資格の統一
現在、弁護士、会計士については、通知をするだけで税理士として活動することができる。これに対し、税理士がこれらの分野で活動しようとすれば、改めてそれぞれの試験を受験しなければならない。
税法が、法律の一分野であり、法人税については企業会計に関する知識が必要なことも事実であるが、純粋な筋論からいえば、弁護士には税法免除、会計士には会計科目免除をすれば済む話であろう。
規制緩和が声高に叫ばれている今日、このような新たな参入障壁を設けることは世の中の大きな流れに反する。
そこで、思い切って弁護士又は会計士と税理士との資格の相互乗り入れをしてはどうであろうか。
バックナンバー
(2001.10.22 ビジネスメールUP!
214号より
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