第5回

環境税の導入

   日本大学教授 矢内 一好

 環境税の趣旨は、スーパーのポリ袋から石油等のエネルギーまで環境にマイナスとなるものに対して税を課すことによりその消費を抑制して環境を保全しようとするものである。地球温暖化防止のための環境税は狭義の意味で使用されており、温室効果ガス(主として二酸化炭素)を排出する石油等のエネルギーが課税の対象となるが、現在、北欧諸国等に実際に導入されており、我が国は未だに導入に至っていない。

 この地球温暖化に対しては、国連が気候変動枠組み条約を作成し、世界のほとんどの国が署名して1994年3月から施行されている。この条約の締約国会議の第3回会議が1997年12月に京都で開催され、加盟先進諸国に2008年から2012年の5年間に1990年を基準年度として温室効果ガスの5.2%削減等を義務付ける「京都議定書」を作成した。この「京都議定書」の批准は、2000年11月のオランダのハーグにおける第6回締約国会議において検討することになっていたが、各国の利害が対立して話し合いは不調に終わっている。

 我が国の現状は、地球温暖化への取り組みが遅れている。現在、石油関連税収は、2000年予算で約5兆8千億円であり、その約80%が目的税として道路財源に使用されている。環境税を導入する場合、この石油関連税に上乗せして課税するのか、又は、石油関連税を廃止して環境税を導入するのかという国内合意がない。問題の焦点は、環境税が仮に導入されたとして、その財源が環境対策に使用されるとすると、道路建設に関連する利害関係者から猛反発がでることが予想されることである。

 我が国は、「京都議定書」を作成した京都会議の議長国であり、国際的に果たすべき役割は重いものがある。この際、国際公約の遂行という点で国内において合意を形成して、環境税をはじめとした地球温暖化防止対策を講じ、国際貢献を果たす時期に至っているものと思われる。

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2001.4.2 ビジネスメールUP! 137号より )

 

 
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