平川税務会計事務所 戸島 優子
第51回
収用交換等の場合の所得の5,000万円特別控除について
☆ 制度の趣旨
法人が資産の収用により交付を受けた補償金は、必ずしも代替資産の取得に充てられるとは限らず、充てられたとしても一部にとどまることが少なくありません。
このような場合においても、収用権を背景とする強制的な資産の買取りであること、公共事業の施行を円滑に進める必要があることなどから、譲渡益について一定の要件を満たした場合に所得金額の計算上、損金の額に算入することができるという特別控除制度が設けられています。
☆ 要件
@ 特例の対象に該当する資産の譲渡である
A 譲渡資産は棚卸資産ではない
B 買取り等申出以後6ヶ月以内に譲渡している
C 最初に買取りの申出を受けた法人が行う譲渡である
D 同一事業年度のうち同一年に属する期間中の収用換地等により譲渡した資産の全部について圧縮記帳の特例を適用していない。
E 確定申告書等に損金算入に関する申告の記載をし、以下の書類を添付する
・ 損金算入に関する計算の明細書
・ 公共事業者から交付を受けた買取りの申し出のあったことを証する書類 ・・・・・・・・・・「公共事業用資産の買取り等申出証明書」
・ 買取り年月日等買収資産の明細・・・・「公共事業用資産の買取り等の証明書」
・ 収用事業に該当することの明細書・・・「収用証明書」
☆ 特別控除の対象金額
特別控除の対象となる金額は以下の算式で計算された譲渡益の金額と5,000万円のうちいずれか低い金額です。
譲渡益の金額=補償金等の額又は交換取得資産の価額−譲渡資産の譲渡直前の簿価+譲渡経費の額
☆ 平成14年改正
要件Bについて本年改正が行われ以下の場合も特別控除の適用が認められることとなりました。
公共事業施行者から当該資産につき最初の買取り等の申し出のあった日から6ヶ月を経過した日後に行われている場合であっても、
@ 土地収用法の仲裁*を受け かつ
A 当該仲裁の申請が当該申し出のあった日から6ヶ月を経過した日までになされているとき
*土地収用法の仲裁とは
平成13年7月に交付された「土地収用法の一部を改正する法律」(以後「改正収用法」という)により制定された制度 紛争が土地等の取得に際しての対償のみに関するものであるときは、関係当事者の双方は書面をもって、当該紛争にかかる土地等が所在する都道府県の知事に対して、仲裁委員による当該紛争の仲裁を申請できるというもの。
*6ヶ月以内の譲渡
5,000万円控除は、土地建物等が収用されその対価補償金をもって代替資産を取得した場合、譲渡所得に対する課税が繰延べられるという「買換えの特例」との選択適用となっています。
5,000万円控除においてポイントとなる、申し出日より6ヶ月以内の譲渡が行われない場合でも、代替資産等について一定の要件を満たせば「買換えの特例」は適用可能となります。
(2002.5.8 ビジネスメールUP!
286号より
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