平川税務会計事務所  平川 茂


第50回
租税回避防止のための包括規定

☆ 同族会社の行為計算の否認
  租税回避行為を防止する規定として、伝家の宝刀と呼ばれる「同族会社等の行為又は計算の否認(法法132)」がある。「同族会社等の行為又は計算でこれを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは…税務署長の認めるところにより…法人税の額を計算することができる。」という規定だが、この規定が発動する要件は「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合」となっている。
  発動要因が具体的な内容ではないため、同族会社が税金の減少を伴う行動を起こす場合には注意が必要である。判例等により発動要因を分析すると、いわゆる「ためにする行為」で節税以外に目的がない場合は発動される危険がある。法の乱用や迂回行為、不自然な取引により税金が減少された場合も同様である。

☆ 企業再編成でも注意が必要
  そして、平成13年度の企業組織再編成税制導入に伴い同様な包括規定が加わった。「合併、分割、現物出資若しくは事後設立によりその有する資産(及び負債)の移転を行った(又は受けた)法人(又は株主法人)等の行為又は計算でこれを容認した場合には…法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは…税務署長の認めるところにより…法人税の額を計算することができる(法法132の2)」となっている。
  「同族会社の行為計算否認」が同族会社等を対象としているのに対し、本規定は組織再編成を行った法人及び株主を対象としている。つまり同族会社だけではなく、公開会社を含む組織再編成を行うすべての法人が対象となる。税制上の適格組織再編成は、資産の簿価移転を認めている。
  そのため、含み益が出る資産は適格再編成で移転し、含み損が出る資産は売買や非適格再編成で移転することで税金を減少させることができる。このように節税目的だけで移転方法を使い分けた場合、この包括規定が発動させる危険性がある。

☆ 連結納税にも規定される
  また、平成14年度の「連結納税制度」導入にあたっても、多様な租税回避行為に対応するための包括的な租税回避行為防止規定等を設けている。新制度を活用して連結納税を行う場合には、新たな包括規定の発動要因に注意が必要だ。

2002.4.22 ビジネスメールUP! 283号より )

 

 
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