平川税務会計事務所 高野 雅之
第39回
償却資産税の申告の注意点
1、 償却資産と申告とは
毎年1月1日に現在に事業用の償却資産を所有している方は償却資産税という税金が課税されます。
償却資産とは、土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、その減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上、損金又は必要な経費に算入されるもののうち、その取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税法又は所得税を課されない方が所有されているものも含みます。)をいいます。
そして、償却資産税は納税者からの申告賦課制度をとっているため毎年1月1日現在にこの償却資産を所有している方が1月31日までに資産の所在する市町村にその資産の内容を申告することになります。
2、 建築設備における家屋と償却資産区分
建築設備とは、電気設備、給排水設備、衛生設備、空調設備、運搬設備などの家屋と一体となって家屋の効用を高める設備をいいます。 国税の固定資産の償却対象であっても家屋は別途固定資産税が課税されるため償却資産から除かれますが、家屋の所有者と異なる者(賃借人)が貸しビル・貸店舗等に施工した内装、造作及び建築設備等については、償却資産として取り扱います。
以下固定資産該当資産と償却資産該当資産について区分すると次のようになります。
○=固定資産税該当資産 ◎=償却資産税該当資産
設備等の内容
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家屋と建築設備等の所有関係
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同じ場合
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異なる場合
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家屋
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償却資産
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家屋
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償却資産
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1 |
床、壁、天井仕上等 |
○
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◎
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2 |
工場等の電力源である電気設備 |
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◎
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|
◎
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3 |
ビル等における受・変電設備、発電機設備、蓄電池設備 |
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◎
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|
◎
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4 |
中央監視制御装置、電話交換機 |
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◎
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|
◎
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5 |
電気設備(2,3,4に該当するものを除く。) |
○
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|
|
◎
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6 |
給排水、衛生及びガス設備 |
○
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|
|
◎
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7 |
冷房、暖房及び通風設備又はボイラー設備(工場等における生産設備であるボイラー等を除く。) |
○
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|
|
◎
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8 |
昇降機設備 |
○
|
|
|
◎
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9 |
消化、排煙、災害報知設備及び格納式非難設備 |
○
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|
|
◎
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10 |
エアーカーテン及びドア自動開閉設備 |
○
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|
|
◎
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11 |
金庫室の扉 |
○
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|
|
◎
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12 |
店用簡易装備、間仕切り(簡易なものを除く。) |
○
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|
|
◎
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3、 申告の必要のない資産
(1) 自動車税・軽自動車税の課税対象となるもの
(2) 無形固定資産
(3) 繰延資産
(4) 平成10年4月1日以後開始の事業年度に取得した償却資産で、・耐用年数が一年未満又は取得価額が10万円未満の償却資産について、税務会計上固定資産として計上しないもの(一時に損金算入しているものまたは必要経費としているもの)・取得価額が20万円未満の償却資産を、税務会計上3年で一括償却しているもの
4、 国税との主な違い
国税の有形固定資産の取扱と償却資産の取扱においての違いは次のようになります。
項 目 |
国税の取扱い(法人税法・所得税法) |
地方税の取扱い(固定資産税) |
償却計算の基準日 |
事業年度(決算期) |
賦課期間(1月1日) |
減価償却の方法 |
定率法、定額法等の選択制度(建物については定額法) |
原則として定率法(特例として取替法、生産高比例法) |
前年中の新規取得資産 |
月割償却 |
半年償却(1/2) |
圧縮記帳の制度 |
認められます。 |
認められません。 |
特別償却・割増償却(租税特別措置法) |
認められます。 |
認められません。 |
増加償却 |
認められます。 |
認められません。 |
評価額の最低限度 |
一般の資産は取得価額の100分の5特定堅牢構築物は1円 |
取得価額の100分の5 |
改良費の評価方法 |
改良費は合算して評価します |
改良費は区分して評価します。 |
5、 コンピューターの耐用年数の変更
平成13年3月30日付けで「減価償却資産の耐用年数等に関する省令の一部を改正する省令(財務省令第34号)」が交付(同年4月1日施行)され、下記のとおりコンピューターの耐用年数の短縮が講じられました。
ただし、税務会計上コンピューターの耐用年数を変更しているものに限ります。
[耐用年数]
改正前 |
改正後 |
電子計算機 6年 |
電子計算機
パーソナルコンピューター(サーバー用のものを除く) 4年
その他のもの 5年
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これに伴い、償却資産においての取扱は、個人事業者の方及び3月から12月末決算法人の方につきましては、平成14年度申告から新耐用年数が適用(1月、2月末決算法人の方は平成15年度申告から適用)されますが、既存の申告分については申告賦課制度となっているため変更の申告があった場合のみ新耐用年数が適用されるので注意が必要です。
なお、耐用年数の改正は、過年度の評価計算まで適用するものではありません。
[適用開始時期]
事 業 者 |
適用開始時期 |
対象となるものの取得時期 |
個人事業者 |
平成14年度申告 |
平成14年1月1日までに取得したもの |
3月〜12月期決算法人 |
平成14年度申告 |
平成14年1月1日までに取得したもの |
1月・2月期決算法人 |
平成15年度申告 |
平成15年1月1日までに取得したもの |
具体的な、耐用年数の変更を行う申告の記載方法は各市町村によって取扱が異なりますのでそれぞれご確認の上手続きを行ってください。(例として東京都特別区においては減少資産用の明細書に訂正欄が設けられています)
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(2002.1.28 ビジネスメールUP!
248号より
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