平川税務会計事務所 飯塚 正幸
第16回
海外渡航費の取り扱いについて
海外渡航(視察旅行)費の損金算入が明確になりました
夏休みを前にして、現地での業務と観光とを合わせて行う海外視察旅行が増える時期となりました。海外渡航費については、税務上、業務に係る部分と観光に係る部分とに合理的に区分し、業務に係る部分については損金とし、観光に係る部分は、給与(役員の場合賞与)となります。国税庁は、先般この合理的区分について、損金等算入割合を下記算式により計算して損金算入部分を計算するという通達を公表しました。これはこの通達を公表することによって、税務調査の効率化等を諮るという課税当局の考え方によっています。(内容については、平成12年11月に当時の総務庁行政監察局より出された「税務行政監察結果報告書」に記載されています。)
損金等算入割合
損金等算入割合は「業務従事割合」を10%単位(10%未満は四捨五入)で区分します。「業務従事割合」は、旅行日程を(1)視察等業務に従事したと認められる日数、(2)観光を行ったと認められる日数、(3)渡航(移動)日その他に区分し、次の算式により計算した割合をいいます。
(1)の日数 ÷ ((1)の日数 + (2)の日数)
損金等算入割合が90%以上の場合には全額を必要経費に算入します。損金等算入割合が10%以下の場合には全額が損金算入できません。
また、その海外渡航が業務遂行上直接必要であると認められる場合「業務従事割合」が50%以上の場合に限る。)には、係った費用を往復の交通費の額とその他の費用の額とに区分し、その他の費用の額に損金等算入割合を乗じ、その金額に往復の交通費の額を合計した金額が必要経費の額となります。
日数の区分
「業務従事割合」の基礎となる日数の区分は次のようになります。
昼間の通常の業務時間(概ね8時間)を1.0日としてその行動状況に応じ、概ね0.25日を単位に算出します。また夜間、視察等の業務に従事していれば、これも加算します。一方、旅行日及び現地の会社等の休日となる土・日曜日及び祭日は除かれます。
業務上か観光かの判断
税務上の海外渡航費の判断基準である「会社の業務上必要か否か」は、その旅行に参加するか否かが会社の業務上必要かどうかではなく、その旅行の内容そのものが会社の業務遂行上必要なための旅行か否かを判断して決めることとされています。
税務調査のための必要書類
海外渡航費については、税務調査で問題となるケースがよく見受けられるので注意することが必要です。 海外渡航費の妥当性のために「海外旅行の目的」「旅程、視察、訪問先の資料」「出張報告書の作成」「参加者名簿」「海外渡航費清算書」の書類を完備する事が大切です。
海外渡航費の取扱いフローチャート
1.旅行の内容
団体旅行主催者
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団体旅行名称
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旅行目的
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旅行日程
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参加費用
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その他
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2.参加者リスト
※上記1.2については適宜旅行会社の日程表等を添付。
※上記1を説明する資料については、必要に応じ団体旅行の主催者等の所在地を所轄する税務署又は国税局を通じて入手する等、事実関係の的確な把握に努める。
3.日数の区分
※8時間を1.0時間とし、0.25日を(2時間)単位にて算出。
ただし、夜間における視察等の日数を加算する。
(1)視察等の日数
・ 工場、店舗等の視察、見学又は訪問
・ 展示会、見本市等への参加又は見学
・ 市場、流通機構等の調査研究等
・ 国際会議への出席
・ 海外セミナーへの参加
・ 同業者団体又は関係官庁等の訪問、懇談
(単位:0.25日)
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平日昼間における視察等の日数 |
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平日夜間における視察等の日 |
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土曜・日曜等休日における視察等の日
(夜間を含む) |
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現地における視察等に係る移動日等の日数
(休日を含む)
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合計
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(2)観光の日数
・ 自由行動時間での私的な外出
・ 観光に付随して行った簡易な見学、儀礼的な訪問
・ ロータリークラブ等その他これに準ずる会議で、私的地位に基づいて出席したもの
(単位:0.25日)
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平日昼間における視察等の日数 |
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現地における視察等に係る移動日等の日数
(休日を含む) |
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当該旅行の殆どが観光と認められ、かつこれらの日の前後の行動状況から一連の観光を行っていると認められるような場合の、休日の日数 |
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合計
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4.業務従事割合(損金等算入割合)
視察等の日数
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=
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3(1)
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=
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(注) |
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%
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視察等の日数+観光の日数
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3(1)+3(2) |
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(注)10%単位、10%未満の端数については四捨五入
※参加者のうち別行動をとった者等個別事情のある者がいる場合、当該者については、個別事情を斟酌して業務従事割合の算定を行う。
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(2001.8.6 ビジネスメールUP!
186号より
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