確定決算主義の2つの方向性(その2)
前回(その1)は、確定決算主義の限界(改革面)を簡単に説明しましたが、他方で確定決算主義には、重要な意義(保守面)があり、確定決算主義の意義を、積極的に見直していこうとする動きもみられます。
国際会計基準の導入・連結納税制度の導入などで、確定決算主義の限界がみられるとはいっても、わが国で国際会計基準の導入・連結納税制度の導入を行っている企業は、ごくわずかとみられ、証券取引法に基づく会計・公認会計士の監査を受ける企業を含めても、全申告法人の1%程度ではないかといわれています。
申告法人数で1%程度の法人税申告に一定の問題点が指摘されるとして、大多数の法人が便利に採用している確定決算主義を改める必要性があるのかが問われています。そして、確定決算主義に代わる大多数の法人が採用することができる適当な税務と会計の調整方法が、今のところみつかっていないのです。
確定決算主義を放棄して、税法が企業会計から分離して課税所得計算を行わねばならないとすれば、企業会計用の決算書と税務申告用の決算書が必要となり、これらを作成することは,申告法人の大多数を占める中小・零細法人にとって、大きな負担となってきます。
このような状況を踏まえて、中小企業庁・日本税理士連合会は、中小企業の会計のあり方を検討しています。中小企業の現状に即して、これまで以上の会計での負担を課すことを不適切であるとし、確定決算主義を前提として、簡易な会計基準の採用を認めることを提言しています。
大小会社に同一の基準を適用することに無理があるとして、税務的に大小会社を区分して取り扱うことも今後の検討課題とはなるでしょう。今、税務と企業会計を結ぶ確定決算主義は、多様な意見のぶつかり合う対象となっています。
(2002.9.11 ビジネスメールUP!
337号より
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