米国におけるストック・オプションの費用認識
米国の不正会計事件をきっかけに話題となっているストック・オプションの費用認識の問題。日本においても金融庁が8月6日にまとめた「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」において、企業会計基準委員会に対して早急に取り組むよう要請が行われている。
企業会計基準委員会では、今年の12月を目途に「基本論点整理表」を公表する予定だが、その際の最大の論点が前述したストック・オプションを権利付与した時点で費用計上するかどうかという点だ。現行では、権利付与日では何ら処理は行われず、ストック・オプションが行使された時点で資本取引として会計処理を行っている。
ストック・オプションの費用認識については、「企業にとってキャッシュ・アウトフローなど、会社財産の流出が発生しないという意味で負担が生じないことから費用認識は不要である」という意見と「価値ある労働役務を費消している以上、費用認識すべきである」との2つの意見がある。企業側からしてみれば、ストック・オプションを費用計上すると、多くの企業がストック・オプションの計画を縮小、あるいは廃止することが予想され、経済的な悪影響があるというのが大きな反対理由だ。しかしながら、世界的な動向は費用認識する方向となっているようだ。
例えば、国際会計基準では、ストック・オプション会計基準についての暫定合意事項が明らかにされている。ここではストック・オプションの権利付与日に費用認識する方向だ(※2002年12月に公開草案を公表予定)。
一方、米国会計基準においても現行の基準によれば、ストック・オプションは権利付与日に費用認識することになっている。では、どうして米国ではストック・オプションを費用計上するかどうかが問題になっているのだろうか。
これにはきちんとしたカラクリがある。この現行の会計基準が制定された際には、ストック・オプションによる費用計上が多額になるという経済界からの強い反対により、現行の会計基準の前の基準についても引き続き認められているからである。もう少し詳しくいえば、以前の会計基準では日本と同じくストック・オプションの権利付与日には何ら会計処理は行わないというもの。したがって、米国企業のほとんどは注記をすることによって、以前の会計基準を引き続き適用して費用計上を回避していたわけである。
(2002.8.9 ビジネスメールUP!
326号より
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