特集! 政府税調の『基本方針』を読み解く
第4回・相続・贈与税の改革の方向性

 第4回は政府税調の『あるべき税制の構築に向けた基本方針』における相続・贈与税関係を取り挙げます。相続・贈与税の改革の方向性は、「広く薄い課税」と「生前贈与の活用」に集約されます。

  相続税が課税される割合は、この数年5%台で推移しており、相続税自体が一部の富裕者に対する課税となっています。一方、相続税の最高税率は70%となっており、その負担感は大きく、租税回避を助長する要因となっています。

  現行の相続税の基礎控除額は、5,000万円+1,000万円×法定相続人の数となっています。小規模宅地等の評価減特例・配偶者に対する相続税額の軽減制度とともに、基礎控除額が高額であることが、相続税が一部の富裕者に対する課税となっている大きな要因になっています。答申では、「広く薄く」の観点から基礎控除額の引き下げを検討すべきであるとするとしています。また、死亡保険金・死亡退職金の非課税措置(いずれも、500万円×法定相続人の数が現行制度では非課税)を廃止あるいは縮減することにより、課税ベ−スを広げる方向を盛り込んでいます。

  最高税率の見直しについては、この数年の税制改正の検討項目に上がりながらも見送られてきました。個人所得税の最高税率(国・地方合計で50%)・諸外国の例に比しても相当高いことから、引き下げることが適当であるとしています。

  わが国の贈与税は、相続税の課税回避を防止する観点から、税負担が比較的高い水準に設定されてきました。生前贈与が行われにくい仕組み(税制)がとられていることになります。しかし、わが国の状況は、高齢者に資産が偏在する状況となっており、経済活性化の観点からも、高齢者資産の活用が期待されています。そこで、「生前贈与」の活用が検討されることになっているのです。贈与税については、これまで、単一年で課税してきたのに対し、相続税・贈与税の累積課税化を検討することを答申に盛り込んでいます。贈与が相続に比して著しく不利な次世代への資産移転である現行税制から、贈与を相続に比して中立な資産移転として設計し、「生前贈与」を推進し、ひいては、経済の活性化につなげたいとしています。

  事業承継関連税制については、事業用宅地に対する特例である「小規模宅地等の課税の特例」から将来的には「事業用資産全体に適用される特例措置」への改組を含めた検討を答申に盛り込んでいます。答申には、具体的な制度設計が盛り込まれていませんが、平成14年度税制改正で創設された「取引相場のない株式等に対する相続税の軽減措置」の拡充を中心に検討されることになると思われます。

2002.6.26 ビジネスメールUP! 307号より )

 

 
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