特集! 政府税調の『基本方針』を読み解く
第1回・個人所得課税の改革の方向性
政府税制調査会(石 弘光会長)は、6月14日、『あるべき税制の構築に向けた基本方針』を取りまとめ、小泉首相に答申した。なかでも、個人所得課税の改革の方向性は、「広く公平に負担を分かち合う」との理念の下、増税色の濃いものとなっている。
答申では、個人所得課税の「空洞化」に強い懸念を抱いている。また、個人所得課税を基幹税として、本来果たすべき財源調達や所得再分配機能の中核に位置付けている。具体的には、@諸控除A税率構造B恒久減税の見直しを行うこととしているが、各論については、党税調などでの議論を経て実施に移されるものであり、今後も多くの議論を巻き起こすことになるだろう。個人所得課税に関する今回の答申の内容は、いずれも税負担の増加に結びつくものであり、答申においても負担増が急激とならないような段階的実施を検討すべきとしている。また、下記の内容の他、個人所得課税に「総合課税」を志向していた政府税調が、「二元的所得税」を検討課題としていることも本答申の大きな特徴である。
@ 諸控除の見直し
所得税計算における諸控除については、まず、人的控除の簡素化・集約化を答申している。個別の控除項目としては、特定扶養控除、老人扶養控除、勤労学生控除、寡婦(夫)控除、配偶者特別控除について、廃止を含め、できる限り簡素化する方向性を打ち出している。
高齢者本人に対しては、老年者控除と公的年金等の控除制度が設けられているが、世代間の公平及び高齢者間の公平の視点から、大幅に縮減する方向で検討するとしている。
給与所得控除については、勤務費用の概算控除としての合理的な水準を見極めつつ、縮減する方向で検討することにしている。 生損保控除・住宅ロ−ン控除などの政策目的のための控除についても、廃止・縮減の方向で見直すこととしている。
A 税率構造の見直し
税率については、これまでの税率引き下げ・簡素化により、国際的にも低い水準にあるとして、これ以上の税率引き下げは適当ではないと答申している。所得税の課税状況をみると、納税者の約8割が最低税率(10%)の適用のみで済んでおり、最低税率(10%)の適用の幅を縮小することが今後の選択肢であるとしている。
B 恒久減税(定率減税)の見直し
平成11年度に実施され、現在も継続している「定率減税」については、景気回復のための負担軽減措置であり、今後の経済情勢を見極めつつ廃止していく必要を答申している。
(2002.6.19 ビジネスメールUP!
304号より
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