外形標準課税
都道府県と地方税制を所管する総務省は、法人事業税(都道府県税)への外形標準課税の導入を推進しています。現行の法人事業税は、国税の法人税と同様に「所得」を課税標準としています。「所得」を課税標準とすると、欠損企業は法人事業税を負担しないことになりますが、全法人の2/3は、欠損法人となるため、法人事業税を負担していません。
課税当局は、法人事業税を、受益に応じた負担を求める税(応益課税)として位置付けています。その結果、欠損法人であっても行政サ−ビスを受益しているのだから、法人事業税の負担をすべきであるということになります。「所得」以外の基準、売上高、付加価値額、従業員数、給与総額、資本金額、総資産金額等の「外形基準」に基づき課税する制度を整備しようとしているのです。
課税当局は、外形標準課税の導入により、事業規模に応じて薄く広く公平に課税が行われるとしています。また、幅広く課税が行われることから、安定した税収が期待されます。
具体的に「所得」に代わる「外形基準」とは、どのようなものでしょうか。総務省では、「概ね、所得割3、付加価値割2、資本割1の割合で併用する」法人事業税の改革案を作成し、この案をもとに平成15年4月1日以後に開始する事業年度からの適用をしようとしています。総務省の目論見どおりに外形標準課税が導入できるかは、経済状況次第というところです。
さて、東京都及び大阪府は、特定の銀行に対して、課税標準を「所得」から「業務粗利益」に代えて法人事業税を課税するいわゆる「銀行税条例」を制定しました。銀行の業務粗利益を外形標準として、独自の制度を採用したことになります。銀行は、東京都内・大阪府内において広範に営業活動を行い、行政サービスを受益しているにもかかわらず、巨額の貸倒れの計上等により欠損法人となり、法人事業税を負担しないことになっていました。「銀行税条例」は、裁判で争われ、東京地裁は、銀行業等を狙い撃ちした外形標準課税は、地方税法の規定に違反して、違法で無効とする判決を下しています。
「外形標準課税が導入されるか」「東京都等が独自に採用した外形標準課税(銀行税条例)は、どのような取扱いとなるのか」いずれも、今後の判断を待っている状況です。
(2002.4.12 ビジネスメールUP!
279号より
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