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租税回避の意図なしも移転価格税制適用
国内販売価格の下落で輸入価格を見直さないケース、所得の海外移転に

・ 東京地裁は4月27日、輸入商品の国内販売価格の下落で内国法人が多額の損失を計上する一方で外国法人に利益が著しく偏っていたことを理由とした移転価格税制の適用は適法と判断。
・ 移転価格税制の適用に際し、脱税や租税回避等の意図は考慮する必要はないと指摘。

 今回の事案は、日本国内で青果物を販売している内国法人X社(原告・納税者)が、租税特別措置法66条の4にいう国外関連者に該当する外国法人A社から青果物を輸入した取引について、原処分庁が独立企業間価格と本件国外関連取引の対価との差額をX社からA社に対する所得移転であると認定し、移転価格税制を適用する更正処分等を行ったもの。具体的には、青果物の日本国内の販売価格下落によりX社が多額の損失を計上する一方で、X社とA社間で輸入価格の見直し交渉などが行われなかった結果、A社に利益が著しく偏っていたことが所得の海外移転とみなされ、移転価格税制の適用につながっていた。
 納税者であるX社は、X社の営業利益の減少は、日本国内の市況の変化等による売上の大幅減が原因であって、その利益の減少は移転価格の設定とは無関係な日本の特殊要因によるものというべきであるから、本件国外関連取引に移転価格税制上の問題はなく、原処分庁の更正処分等は違法である旨などを主張していた。
 東京地裁の定塚誠裁判長は、まず日本の移転価格税制について、国外関連取引を通じて所得の海外移転が認められる場合に、当事者の脱税ないし租税回避の意図等を考慮することなく、その取引価格を独立企業間価格に引き直して課税所得を計算することにより、所得の海外移転を防止する制度であるとの解釈を示した。
 そのうえで本事案については、市場価格の変動は市場主義経済の下では常に生じるものであるから、そのような損失をもって、ただちに市場の特殊要因により生じた損失とは言い難いと指摘している。
 また、通常の独立企業間取引であれば、需給等の変化により一方の当事者のみに多額の営業損失が生じるような場合、取引価格の改定や取引量の減少などをせずに従前の条件のまま取引を継続することは通常は考え難いことを指摘。その影響は少なからず他方の当事者にも及ぶものと考えられることから、その損失を専ら日本側の輸入業者であるX社に帰属させるべきとする合理的な根拠は不明であるとして、原処分庁によるX社への移転価格税制の適用は適法であると結論付ける判決を言い渡している。

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  キーワード 「移転価格税制 適用」⇒134

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登録日

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(以上、最新順)  

 

週刊「T&A master」452号(2012.5.28「今週のニュース」より転載)

(分類:税務 2012.8.10 ビジネスメールUP! 1718号より )

 

 
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