誌上コンサル 先生、こんなときどうするの?
宗教法人の借地整理と権利金方式による定期借地権分譲
船井財産コンサルタンツ 個人コンサル第三事業部 成島祐一
状 況
今回は、借地にまつわる相談です。借地人であるAさんは地主であるお寺から土地を借りて、工場と自宅を建築し事業を行っていました。長引く不況のなかでAさんは工場を閉鎖し、地主(お寺)から建替えの承諾を頂いて収益物件(アパート)を建築し、収益を上げようと考えました。
ところが、借地人と地主(お寺)との人間関係は、あまりよいとはいえませんでした。工場の建っている土地の地代が自宅の地代と変わらず低廉であり、地主は借地人に対して再三増額要求をしましたが、借地人はことごとく拒否をし、現状ではこの貸地の収支は赤字となっていました。そのため、特に地主の方が、借地人をよく思っていなかったのです。
そんな事から地主はこの機会に今までの思いを晴らすべく、「借地人を困らせてやろう!」と考え、建替え承諾を拒否しました。
両者の希望を聞いたところでは、地主は、この借地人との契約を解除し、新たに収益を上げる仕組みを考えたいというものでした。一方、借地人は、とにかくこの土地で収益を上げ、生活していくことを望んでいました(それしか選択肢がなかったともいえます)。
対策と効果
対策として、@借地権と底地(所有権)を交換し、自宅用地は地主(お寺)に返し、工場用地を所有権として、そこに自宅併用アパートを建てることによって収益を上げるとともに、地代負担を減少させる、A地主は返還された土地から収益を上げる仕組みを策定することにしました。
収益を上げる手法は様々ありますが、地主はお寺なので、借入や保証金といった債務を負いたくないという希望のほか、今の時代、保証金を預かったとしても有効に運用できないという市況だったため、「権利金方式による定期借地権」を地主に提案しました。
簡単に仕組みを説明しますと、大手ハウスメーカーが権利金方式で土地に定期借地権を設定。ハウスメーカーは、建物を建築して「定期借地権付き建物」として購入者(エンドユーザー)に転売します。ポイントは「権利金方式」を活用したことと、この提案を受け入れてくれる事業者を見つけることができたことです。
購入者は、支払って戻ってこない権利金より将来返還される保証金を好みますので、事業者としては販売しやすい保証金方式のほうが事業化しやすいのです。この様な状況で、権利金方式の定期借地権分譲に取り組む事業者とマッチングできたことはとても大きいことでした。
また、権利金の活用面から考えてみても、権利金の額が時価の2分の1以上であれば「事業用資産の買換えの特例」(平成23年12月末までの時限措置)の活用もできますので、譲渡益課税の圧縮にもなります。
お問合せ先
株式会社船井財産コンサルタンツ
個人コンサル第三事業部
成島祐一 yy.narushima@funai-zc.co.jp
※
記事の無断転用や無断使用はお断りいたします
⇒著作権等について
T&Amaster
読者限定サイト 検索結果(注:閲覧には読者IDとパスワードが必要になります)⇒ID・パスの取得方法
キーワード 「権利金」⇒108件
(週刊「T&A master」381号(2010.12.6「誌上コンサル 先生、こんなときどうするの?」より転載)
(分類:その他 2011.1.26 ビジネスメールUP!
1500号より
)
|