監査法人が役員給与税制の改正で定期同額給与の改定時期を変更
「事業年度開始から3か月以内の改定」との要件に抵触
利益連動給与や事前確定届出給与と比べ、損金算入への障害は少ないとみられていた定期同額給与だが、これまで公認会計士試験の合格発表後に法人税法上の役員への定期同額給与額を改定してきた監査法人では、同給与の損金算入規定を満たすために長年の慣習を改め、同給与の改定時期を6月に変更した模様だ。
‘安全パイ’とみられていた定期同額給与だが……
18年度税制改正により、法人税法上の役員給与は、@定期同額給与(法法34条1項1号)、A事前確定届出給与(同項2号)、B利益連動給与(同項3号)、の3種類となったが、定期同額給与は、今年夏に支給される分の損金不算入が確定的となっている事前確定届出給与(本誌168号6頁参照)や、厳格な損金算入要件が設けられている利益連動給与に比べ、損金算入への障害はほとんどないとみられていた。
こうしたなか、監査法人の法人税法上の役員への定期同額給与が、これまでの給与額の決定方法のままでは損金不算入となることが文理解釈上確定的となり、大手監査法人などでは、役員給与の改定時期の変更に踏み切った模様だ。
採用数に応じて役員給与額を決定
定期同額給与の範囲について定めた法人税法施行令69条1項1号には、「定期給与の額につき当該年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日までにその改定がされた場合」とある。すなわち、3月決算法人であれば、6月末までに定期同額給与額の改定を終えていることが損金算入の要件となる。ここでいう「改定」とは、会計期間開始の日から3月を経過する日までに開催される定時株主総会、取締役会において役員給与に関する規定が改定されることを意味し、実際の支給までは求めないものと考えられるが(本誌163号7頁参照)、「改定」という以上、少なくとも役員給与の金額は確定していることが求められよう。
監査法人は、従来、12月(かつては10月)に発表になる公認会計士試験の合格者がどれだけの人数入社するかを見極めてから、役員の定期同額給与額を決定してきた。しかし、この時期における同給与の改定が「会計期間開始の日から3月を経過する日までに改定されていること」という定期同額給与の損金算入要件を満たさない可能性が濃厚であったことから、監査法人側の対応が注目されていたが、結論として、監査法人は定期同額給与の改定時期を6月に変更した模様だ。
役員給与税制の改正が長年の慣習を変えたケースとして注目されよう。
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キーワード 「役員給与」⇒50件
(週刊「T&A master」171号(2006.7.17「今週のニュース」より転載)
(分類:税制改正 2006.8.25 ビジネスメールUP!
885号より
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