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名古屋高裁、一審判決を取消し、歯科技工業は「サービス業」
消費税法基本通達に基づく事業区分を容認

 

 名古屋高裁民事1部(田中由子裁判長)は、平成18年2月9日、歯科技工業の消費税簡易課税制度における事業区分が第三種事業(製造業)に該当するか、第五種事業(サービス業)に該当するかが争点となった事案について、同業種の課税仕入れの構成比(TKCの平成13年版指標によると歯科技工所は42%)に照らしても、みなし仕入率を50%とすることには合理性があることなどを判示して、消費税法施行令に規定する「第五種事業」中の「サービス業」に該当するものと判断し、「製造業」に該当するものとして納税者の主張を容認した原判決を取消し、納税者の請求を棄却する逆転判決を言渡した。

事案の概要
 本件は、消費税簡易課税制度を選択していた納税者(法人)が、自己の営む歯科技工業が第三種事業(製造業)に該当し、みなし仕入率が70%であるとして、消費税等の申告をしたところ、所轄税務署長から当該事業は、第五種事業(サービス業)に該当し、みなし仕入率は50%であるとして、消費税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定を受けたことから、上記各処分の取消しを求めたものである。
 原審(名古屋地裁)は、本件事業は「製造業」に当たると解するのが相当と判断し、納税者の本件各請求を認容していた。

「簡易課税制度の目的及び立法経緯等についても検討が必要」
 第一審は、税法中の用語の解釈について、「租税法中の用語は、当該法令等によって定義が与えられている場合は、これによるべきことは当然であるが、そうでない場合には、原則として日本語の通常の用語例による意味内容が与えられるべきである(国民に義務を賦課する租税法の分野においては、特に厳格な解釈態度が求められる。)。」・「製造業とサービス業とは、まず、その給付の対象が有形物(物質的)か無形の役務(非物質的)かによって区別される」と判示していた。
 一方控訴審は、「租税法規の解釈については、当該法令が用いている用語の意味、内容が明確かつ一義的に解釈できるかをまず検討することが必要であることはいうまでもないが、それができない場合には、立法の趣旨目的及び経緯、税負担の公平性、相当性を総合考慮して検討した上、用語の意味、内容を合理的に解釈すべきである。」・「『製造業』及び『サービス業』の用語の意味内容ないし用語例として必ずしも一義的に解釈することが可能なほど明確な概念とまではいえないというべきである。」・「本件の判断にあたっては、消費税法、特に消費税簡易課税制度の目的及び立法経緯、税負担の公平性、相当性等についても検討する必要がある。」と判示した。

TKCの資料では歯科技工所の課税仕入率は42%
 次に、田中裁判長は、「本件事業が日本標準産業分類の事業区分及び消費税法基本通達によれば、『サービス業』に該当することになるところ、TKC(平成13年版)の資料によれば、1企業当たり平均の課税仕入れの構成比は、製造業が70.7%、歯科技工所が42%であることが認められ、消費税法施行令57条の定めでは、みなし仕入率は、『製造業』が第三種事業として70%、『サービス業』が第五種事業として50%とほぼ符号するものである。したがって、歯科技工所を営む事業者が、簡易課税制度の適用を利用する場合の税負担の公平性、相当性等の面からみて、『サービス業』に分類することに不合理性は認められない。」と判示して、用語の意味内容等の解釈に、実態も含めた総合考慮した検討を行う姿勢を示した。

「日本標準産業分類に代わり得る合理的な産業分類基準は見当たらない」
 さらに、第一審が「少なくとも、製造業及びサービス業の語義を厳格に解釈すべき消費税法の適用を念頭に置く局面においては、日本標準産業分類が、歯科技工所をサービス業ないしサービス業としての性格を有する医療業と分類することは合理性を有するとはいえず、歯科技工所との関係では、日本標準産業分類に従って第三種事業と第五種事業を区分する本件通達の合理性を認めることはできない。」と判示していたのに対し、田中裁判長は次のように日本標準産業分類による区分の合理性を指摘し、納税者の請求を斥けた。
 「本件事業が消費税法施行令57条5項所定の『サービス業』に該当するのか、『製造業』に該当するのかについて判断するに、消費税法の簡易課税制度が、納税事務の簡素化を目的としつつ、税負担の公平性の実現のために改正が重ねられてきた経緯、消費税法基本通達が、消費税法施行令における事業の範囲判定の基準として、いずれも日本標準産業分類を掲げているところ、同分類は、本来統計上の分類の必要から定められたものではあるが、日本における標準産業を体系的に分類しており、他にこれに代わり得る普遍的で合理的な産業分類基準は見当たらないことなどから簡易課税制度における事業の範囲の判定に当たり、同分類によることの合理性は否定できないこと、本件事業が、歯科医師の指示書に従って、歯科補てつ物を作成し、歯科医師に納品することを業務内容としており、歯科医療行為の一端を担う事業である性質を有すること、また、1企業当たり平均の課税仕入れ(最大見込額)及び構成比に照らしても、みなし仕入率を50%とすることに合理性があること及び税負担の公平性、相当性をも考慮すると、本件事業は、消費税法施行令57条5項4号ハ所定の『第五種事業』中の『サービス業』に該当するものと判断するのが相当である。また、被控訴人は、義肢製作業が『製造業』とされていることから、歯科技工業を『サービス業』とすることは、課税の公平を害すると主張するが、義肢製作業が『製造業』としてみなし仕入率が70%とされていることをもって、税負担の公平性を害するものとの被控訴人の主張は採用できない。」



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  キーワード 「サービス業」
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週刊「T&A master」151号(2006.2.20「最重要ニュース」より転載)

(分類:税務 2006.3.8 ビジネスメールUP! 819号より )

 

 
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