法人税の実効税率比較
経済産業省がその所管する研究会(「経済活性化のための企業関係税制に関する研究会」)において、「日米の株式時価総額上位の事業会社の実効税率比較」資料を提出したことで、政府内に不協和音を生じさせている。
経産省資料によれば、日本企業の実効税率の平均は、47.1%、米国企業の実効税率の平均33.6%に比して13.5%の格差が生じている。一方、財務省資料によれば、日本の法人所得課税の実効税率は、40.87%、米国の40.75%となっている。財務省は、この統計資料を基に、わが国の法人税は、国際水準に比しても、遜色のないところまで、税率の引き下げを行ってきたと自負しているところである。
このような資料による差異は、地方税のあり方、連結納税制度の有無、法人税の課税所得と企業利益の差異、各種税額控除制度等、多くの原因による複合的なものである。例えば、法人事業税に外形標準課税が導入され、課税ベ−スが拡大されることになれば、全体としての税収が変わらなくても、実効税率は低下することになる。財務省の資料は、法人税等の税率に基づき試算され、理論的であるのに対して、経産省の資料は、株式時価総額上位10社の平均値に基づくものであり、限定された企業ではあるが、実態的なものといえるであろう。
資料の収集方法、対象とする企業の選定により、統計資料に大きな差異が生じていることに、小泉首相も当惑したと伝えられているが、国民にとっても政府公表資料を鵜呑みすることは、誤った判断につながりかねない。「税についての対話集会」で税調が提示した資料に対して、「資料はどのようにも作れる。」との市民の反発が起きているが、政府部内でも同様の問題が生じている。
(2002.4.17 ビジネスメールUP!
281号より
)
|