東京地裁(藤山雅行裁判長)は4月18日、「国外に居住する子に対して外国為替により電信送金を行った被相続人の相続財産について、送金に係る金員は、国外財産の贈与に該当し、相続税の課税価格に加算されるべきではない。」として、課税処分(更正をすべき理由がない旨の通知処分)を取消す判決を行った。
被告(国側)の立証不十分で原告の請求認容
本件贈与は、平成12年度の税制改正により規定された措置法69条(相続税の納税義務者等の特例)の適用開始前の贈与であり、本件贈与時の贈与税の課税価格は、制限納税義務者(国内に住所を有しないもの)については、国内にある財産だけを対象とするものであった。原告は、本件贈与(海外送金分)を相続開始前3年以内の贈与として相続税の課税価格に加算して、相続税の申告を行ったものであるが、相続税法19条により、本件贈与は、相続税の課税価格に加算されるべきものではないとして、相続税の更正の請求を行った。
被告(税務署長)は、贈与財産は、国内に所在する現金であると主張した。被告の主張は、「被相続人は、遺書の中で生前贈与の記載をしており、贈与は、国内で行われたものであり、電信送金自体は贈与契約の履行行為にすぎない。本件贈与により取得した財産は、国内財産として、相続税の課税価格に加算すべきである。」というものだ。
藤山裁判長は、被告の主張には、海外送金以前の贈与契約の成立が必要となるが、被告は、その立証ができていないとして原告の請求を認容した。
12年税制改正で今となっては影響少ないが
平成12年度税制改正では、相続等又は贈与により財産を取得した時において日本国内に住所を有していない相続人等又は受贈者で日本国籍を有する者(相続人等及びその相続等に係る被相続人等がともに相続の開始等前5年以内に日本国内に住所を有したことがない場合の相続人等を除く。)が取得した国外財産を相続税又は贈与税の課税の対象に加えることを規定した。仮に本件に当てはめれば、贈与者が日本国籍を有しているため、贈与税が課税されることになる。判決理由でも立法上の不備を指摘しているが、今となっては本判決の影響は、大きなものとはならない。
しかし、本判決で、国外財産の贈与の意義が明らかになった点は、無視できない。海外の子供の口座への送金が国外財産の贈与と判断されたことは、国外財産の贈与手続きの身近さを明らかにしたものといえるだろう。
http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/c1eea0afce437e4949256b510052d736/85aac61ff7f8afbb49256ba7003567cb?OpenDocument
本日のニュース
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